■【Lovers】■
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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇side 南伊 イギリスの、隣も嫌だが正面だって嫌だ。 そんなワケで「ムキムキなじゃがいも野郎の隣なんて真っ平御免だこのヤロー!」と叫び、ヴェネチアーノを問答無用で自分の隣に座らせた。なのでロマーノはジャガイモ野郎ことドイツの正面、弟であるヴェネチアーノの隣、そして結果的にイギリスは斜め前になるように誘導することに成功したのである。よくやった俺、と褒めてやりたい。 ロマーノはもそもそと大好物のトマトパスタを食べながらちらちらとイギリスを観察する。とてもでは無いが、凝視は出来ない。今朝の出来事は未だ鮮明だ。 (ッチ、ヴェネチアーノのヤロー勝手に人を推薦してんじゃねーよ) 中々戻って来ないヴェネチアーノに業を煮やして、ドイツに様子を見に行こうと言ったのはロマーノだ。 ドイツのジャガイモ野郎は大分抵抗したのだが、やはり余りに遅くて心配になったのだろう。渋々「様子を見るだけなら…」と頷いた。 かくして二人は弟がイギリスを口説いているのを聞き、その挙げ句勝手に人を推薦しているのを盗み聞いたのだ。 (なんだよあのヤロー。昔はこのジャガイモ野郎しか誉めなかった癖によー) やれば出来るでは無いか。『自慢の兄』とは多少こそばゆいが。 (しかしプロイセンが諦めたとはな) 根性ありそうで案外ねーな、とパスタを咀嚼しながらロマーノは思う。 会議場で『恋人』だと言って玉砕していた後も、ちゃんと打ち上げに参加していたし、イギリスと距離はとっていたものの、そこから気配を外していたようには見えなかった。ヴェネチアーノが皆をひっくり返す迄の間、普仏間でお互いを牽制しあうような動きを見ている限り(それにスペインの馬鹿が空気を読まずに押し入っているのを監視していた)こんなにすぐに諦めるなんて想像だにしなかったが、泣きはらした様子のイギリスと、どうにも様子のおかしいフランスから察するに、ロマーノの知らない間に何事かあったのだろう。それとも夜、ドイツと話している間にプロイセンとは決着がついていたのだろうか? (ま、どっちにしたって早すぎんだろ) 二人がいつからそういう関係にあったのかは知らないが(十中八九、イギリスが女性化した後で、プロイセンの言を思いだすなら晴れて結ばれたのは一昨日の事らしいが)、何にしろ展開が早すぎやしないか、とロマーノは思う。 ロマーノは今朝誰かさんに間違われたばかりだ。甘ったるい顔をして、キスをして。惜しげも無く先日出来たばかりの胸の膨らみに触れさせて、あまつさえごにょごにょと濁したくなるような所にまで積極的に触れてきた。 (ちっ畜生コノヤロー!思いだすんじゃねぇよ!俺!!) 食事中だというのにあらぬ所が反応しそうになってロマーノはぶるぶると頭を振ると、性欲から食欲に無理やりシフトする為にガフガフとパスタを口に詰めた。旨い食事が台無しだが背に腹は代えられない。 ともかく。 邪念を追い払って、ヴェネチアーノに楽しそうに話しかけられているイギリスをチラ見して、ロマーノは再び視線を皿の上に落とすと思考を再開させた。 つまり、何が言いたかったのかというと、察するにあれは夢の中だけの出来ごとではなく、恐らくはプロイセンに見せて来たものなのではないだろうか、という事だ。 『ベッドの中の睦言』というからには、『イイコト』は一通り満遍なく終わっているという事である。それは誰かさんと間違ってロマーノに触れて来たイギリスの言からしても分かる事。 (だから、想像すんじゃねーよ!チクショウ!) 触れた胸の感触を思い出して舌打ちしそうになるのを寸前で押しこんで、代わりにそろりと溜息を吐く。まだイギリスの顔を真正面から見れる気がしない。だから関わりたくない。下手に目立って会話しなきゃいけなくなったりなんて考えたくない。 なのに、なのにである。 今朝のショッキングな出来ごとから一日も経っていないのに、ヴェネチアーノはイギリスをウチに連れて帰った挙句恋人として立候補してやがるし、何故かドイツと自分までヴェネチアーノに推薦されて彼らの恋人問題に巻き込まれている。挙句ドイツのジャガイモ野郎はびっくりした事に若干乗り気のように見えて、ロマーノはおいおいお前兄貴の事はいいのかよ、と言いたかった。そういえば昨夜は二人してイギリスの笑顔の虜になっていたし、二人っきりで話していた時は童貞の芋野郎の癖にその体を抱きしめてやるなんていう離れ業をやってのけていたりした。本当にもう、展開の早さに何がどうなっているのか、理解出来ない。 ロマーノは気付かれない程度の溜息を吐きながら、またイギリスを盗み見た。 朗らかな、笑顔だ。 ヴェネチアーノが『可愛いよね』というのも、『優しい』というのも、まったく理解しきれない、という事はない。 まったくほんの少しの期間でしかないが、立て続けに起きた事件の傍観者としてでも、見えてくる事はそれなりにある。 例えばイギリスの態度が嘘であるかどうか、とか。 嘘の可能性も演技の可能性も無くは無い。けれどもその大半は真実だと思える事が出来たから、ならば残りの殆ども真実に近いのだろうと想像する事が出来た。 ロマーノは臆病だ。だから分かる事だって、ある。 二枚舌の嘘吐きで意地っ張りなイギリスは同じ舌で真実と素直さを露呈させる。 だから、恐ろしいだけの存在ではないと、イギリスの見方が大分変わったというのは、否定出来ない事実とはいえ、それでも少しも怖くない…とはやはりいえない。これはもう生き残る為の本能のようなもので、仕方のないものだけれど…。 (…ベネチアーノに毒されてねーか?) ヴェネチアーノが構うものだから、イギリスと関わり合う必然性が出て来てしまった。だから、ドイツの家を出る時に申し訳なさそうに『ごめん』と言ってきたり、駅についてロマーノに荷物を渡す事に気遣っている姿を見てロマーノまでうっかりと『仕方ねぇヤツ』などと思うようになっている。 面倒ごとは嫌いだ。 イギリスの本性がどうあれ、関わり合わない方がいいと本能は言っているのに、何故か見棄ててはいけないような気になってしまう。本当に厄介な事だ。 あまつさえ、何を言われたのかは知らないが、ヴェネチアーノに泣かされて頬どころか鼻の頭まで赤くした間抜け面を可愛いと思うようになってしまっては頭が痛いと言わざるをえない。 (いやいやいや、やっぱりそれはねーだろ…) だって相手はイギリスだ。イギリスが可愛いかったら世界中が可愛くなってしまうだろう。…多分。 だからプロイセン諦めたからと言って、イギリスの事を少し可愛いと思ってしまったからと言ってロマーノの立ち位置は変わったりはしないのだ。弟やジャガイモ野郎みたいにすぐに態度は変えられない。 (………多分) 弟が何事か話かけて(いつでもうるさい奴だ。話題は山のようにあるのだろう。)それを受けてイギリスが控えめに笑った。 優しそうな笑みだ。 イギリスをチラチラ観察しながらそう思う。 弟やスペインのような全開の笑顔では無い。どこか遠慮しがちで、けれども滲み出てしまったというような。 (…俺はこういう奴の方が…) 好きだ、と思って、はっとする。一体何を考えていた?つい先程、己の立ち位置は変わらないと言い聞かせたばかりでは無いか。 (…『好き』って一体何だよコノヤロー!!!) 真っ赤になりそうになって、俯いてフォークを噛んだ。金属の味が微妙にして折角の料理が台無しだ。だが、そうでもしないと自分の想像に耐えられない。 (チクショーコノヤロー!!!) 心中で罵詈雑言を吐きながら、『好ましさ』の理由について考えた。理由が分かればきっと対処が出来る。出来ると信じたい。 ロマーノは耳に弟の軽やかな笑い声が響くのを締めだして思考を深くした。 口に出して言ってなどやらないが、嘘偽らざる言えば、弟やスペインの笑顔は嫌いじゃ無い。時々見てないと落ちつかない。あると安心する。特にスペインのそれはロマーノにとってかけがえの無いものだ。無くなってしまったら夜も昼も明けやしないだろう。 しかしそれでも常に眺めるのには、些かその笑顔は眩し過ぎる。 自分との違いを見せつけられるようで、時々辛くなる。憧れはするが、あまり近くに寄ると溶けて消えてしまいそうな錯覚に陥る事がある。近付き過ぎて破滅したギリシャ神話のイカロスのように。 (…だからっつって、イギリスの笑顔が好きとか…) 思って顔を赤くする。絶好調で弟に毒されている。勝手に恋人にと紹介するものだから、ロマーノまでその気になってしまっているのだ。 (いやいやいやいや…) それは無い。それは無い筈だ、と言い聞かせて、けれども一方で言い聞かせなければならないレベルにまで意識しているのも事実だと認めなければならない。 (…でも本当意味分からねぇ…) 我が弟の事ながら、自分で恋人に立候補してキスまで迫ったくせに何故に他人を勧めるのか…。 ジャガイモ野郎は何か知っているようだが、と思ってムスッとする。何か除け者にされた気がしていけ好かない。 「にーちゃーん!にーちゃんってば!!」 「…あ?なんだよ」 「このパスタ美味しいねって!」 「ふん。何時もの事だろ。わざわざ言うような事じゃ…」 「…ってイギリスが!」 (言うの遅ぇよ!) 「…ああ」 もう答えちまっただろうが!と心の中で罵り、視線を逸らしてあまり意識しないようにする。 イギリスが何か言いたそうにこちらを伺っているのに気付いたが正直直視は出来ない。 だからせめて、何か一言くらいは言葉を継ぎ足すべきだろうかと思ったが、既に会話は流れている。スペインと同じでやたらとテンポの速い会話をする奴だ。 ロマーノは小さくため息をついた。 だから、なのだろうか。 イギリスから順番に客から風呂に入れて、最後にベネチアーノが使っている間、イギリスがロマーノ達の寝室を訪れたのは。 食事を終えて片付けに入り、それぞれが交代で湯を使っている間…。 先に風呂を終えて部屋で寛いでいると、控えめなノック音が聞こえてロマーノは反射的に「ああ」と返事をした。返事した後で『あれ?誰だ?』と思っていると、遠慮がちに少しだけドアが開いた。 「…ロマーノ、ちょっといいか?」 イギリスが悪そうな顔でこちらを窺っていて、ロマーノの心臓は一気に加速度を増した。 「い…イギリス様…!」 思わず仰け反ると視線を逸らして「済まない」と告げられる。 (…ああくそ!) 弟にしても、スペインにしても、ドイツや日本にしたってそんな反応は示さないのに、何でよりにもよってイギリスがそんな態度をロマーノに取るのだろう。今までみたいな態度を取ってくれれば、ロマーノだってこんな罪悪感を感じないで済むというのに。 ロマーノは小さく舌打ちすると「…入れよ」と低く答えた。 「……いや、ここで」 「いいから入れよコノヤロー!」 ついやってしまった舌打ちにイギリスが怯んだのが分かってつい語調が強くなる。 (何でいつもみたいに尊大に振る舞わねーんだよ!) 調子も狂うし、自分の言葉が他者を傷つけるのを知らされるのは大変苦しい。傷つけるつもりの言葉なら構わない。けれどもそのつもりの無い言葉に傷つくのを見るのは心苦しい。 ロマーノはやけくそになって、ずかずかとイギリスに近寄ると、その手を取って室内に引っ張り込んだ。 湯上がりの体を廊下に置いて風邪をひかすのも不本意だ。 「…ろ、ロマーノ?」 握られた手に戸惑ったイギリスの声に、ロマーノは慌ててその手を離して「…ま、まあ座れよ」と着席を勧めた。 「…じゃあ少しだけ…邪魔するな」 イギリスがベッドの端に腰かけたのを見届けてロマーノもどかりと腰を下ろす。 (…って近いだろ!!) うっかり近くに座り過ぎた。しかし今更距離を取るのも不自然に過ぎる。 「…で?要件は何だよ」 こうなったらとっとと話終えて早急に退出して貰うに限る。早々に促すとイギリスは一つ頷いて口を開いた。 「…その…。俺、ここにいていいのか…」 「…は?」 「いや、だって!ここはお前の家でもあるだろ?!イタリアが大丈夫だって言うから着いて来ちまったけど、お前にちゃんと許可を取ったわけじゃねーし!本当は嫌だったら悪いじゃねーか!だから、お前が嫌だってんなら何か理由つけてすぐ帰るから言ってくれ!安心しろ、嫌われるのは慣れてるから!」 (何だそりゃ…) 「………………ー。」 思わず溜め息が出た。 (嫌われるのが慣れてるって何だよチクショーが) その盛大な溜め息にイギリスは勝手に「だよな!」と納得して立ち上がって口上を捲し上げた。 「いや、やっぱりそうじゃねーかなって思ってたんだ!本当、悪いな、世話になっちまって!明日!朝一で本国から連絡あったっつって帰るから気にするな!じゃあっ」 「…あっ!待てよコノヤロー!」 ペラペラと一方的に告げたかと思うと勢い良く身を翻したので、ロマーノは咄嗟にその手を掴む。何というか随分とせっかちで早合点な奴である。 「誰もんな事言ってねーじゃねーか!」 「…いや、だって…!」 「だってもくそもねーんだよチクショー!勝手に俺の気持ちを測るんじゃねーよ!」 幾分乱暴になってしまったがそう告げると、イギリスは視線を惑わせて困ったように眉尻を下げた。何度か口を開閉した後、やっと 「…………嫌い、なんじゃねーのか」 とポツリと零した。 「………………何でそう思うんだよ」 これは『嫌いじゃない』と言われても納得しない感じである。ロマーノ自身、根拠の無い慰めなど信じられ無いたちだ。 イギリスは言おうか言わまいか悩んでいるようだ。何度も視線がうろついているのでロマーノは「いいから言えよ」と促す事にした。 「…………目を、合わさないだろ」 観念したのかイギリスがそろりと口を開く。 「…それから?」 「…後、俺と話した後溜め息つくし…」 「で?」 「…近くにいてもすぐどっか行っちまうしな」 「他には」 「………」 「それで全部かよ」 問い正すと少し間を置いてだが頷いたので、ロマーノは口を開いた。 「目を合わさねーのは、恥ずかしいからだ。俺は元から人の目ぇ見る事自体苦手なんだよ」 こんな事告げるのは本当に恥ずかしい。でも放置したらどんな風に曲解するか分からない。 不信の目は早い内に摘み取らねばやがて手に負えなくなる。それは自分がよく知っている。 だからそのまま続けた。 「溜め息を着いたのは場合によるが、呆れただけだ。それはお前に対してだったり、自分に対してだったり様々だけどな…」 「…?」 意味を図りかねるように眉間に皺が寄るのを見て仔細を告げる。 「さっきついた溜め息はお前に対してのもんだ。嫌われるのは慣れてるとかバカじゃねーのって思った」 「…っ」 「慣れるのと平気になるのは違うだろーがコノヤロー。それを平気みたいに言うんだから呆れて当然だろ」 イギリスの顔が歪んだが無視をした。『だったらどう言えば良かったのか』とかその辺りだろう。気持ちは分かるが、今はその解説は必要ない。 「それから、飯食ってる時のは自分に対してだ。考えごとしてて聞いてなくて、うっかりベネチアーノに返事しちまってからお前が言ったっつわれて、言葉に迷ってる間に話が移っちまった。俺は不器用だから、そういう事がよくある。あれはそんな自分に対する溜め息だ。他の事まで一々覚えてねーけど、別にお前と話すのが嫌で吐いた溜息じゃねーよ」 「…………」 『嫌』には色んなニュアンスがあるが、本当に根っから『嫌』というワケではないので、嘘ではない。 「で、最後はすぐどっかに行くだったか。…近くにいると心臓が耐えられねーからな」 イギリスが『やっぱり』と言いそうな気がしたので先制して「違うぞ!」と牽制する。 「今まで怖かったのも嫌いだったのも嘘じゃねー。今でも反射的に体が竦む事だってあるし、正直全然怖くねーかと言ったらそれは嘘になる。でももう別にホントに『嫌い』って程じゃねーよ。耐えられないっつったのは、そういう意味じゃ無くて…その」 正念場が来てしまった。頬が赤らんで、握った手に力を入れる。 イギリスに真っ赤になった顔を見られているのが恥ずかしい。格好悪く何度も言いよどむ姿を見られるのが、恥ずかしい。 「…わ?!」 ロマーノは少しばかり混乱した頭でイギリスを引き寄せた。ベッドに押し倒して、丸くなった緑の目を睨みつける。 「こういうの意識しちまうんだよチクショー!テメーが悪いんだからな?!今朝あんな事するから!」 「…あんな事って…」 言ってから口を滑らせた事に気がついた。チッと舌打ちして、もう知らねーと吐き出す。 「…今朝、誰かさんと間違っただろコノヤロー」 「…今朝。」 「覚えてねーか?脚絡ませて来たのはそっちだろ?」 「…え、と…」 「寝ぼけてたもんな。覚えてねーか。お前俺の手をお前の…その…触れさせて…、キスしたりして…来た、だろ…」 そこから何と言っていいか分からなかった。勢いで言ったはいいが段々舌が縺れて来た。恥ずかし過ぎる。何もかもがだ。 イギリスもどうやら頭がついていってないようで、目を見開いたまま固唾を呑んでいる。 鼓動が速い。 今の体勢が今朝の事と相俟って、ロマーノの思考をぐちゃぐちゃにする。 しばらく無言の空白が続いたが、先に回復したのはイギリスだった。「あ」と合点がついたらしく小さな声を漏らすと、かあああと顔を赤らめて「ごめん」と呟き顔を逸らした。 恥ずかしさと緊張で全てがガチガチに凍りついていたロマーノは、説明をする手間が省けて少しばかりほっとしながら上体を起こして、それからイギリスの赤らんだ首筋を見下ろして眼を眇めた。 (嫌なモン見つけちまった) 確か昨日までは無かった筈の首筋に浮いた赤い斑点。いくら初心なロマーノとて、流石にその紅が何を指すのかくらいは知っている。 「フランスか?」 前後の理由を察しながら鬱血を指先で軽く触れるとぴくりとイギリスの体が震えて、不安そうな目でこちらを窺われたので、ロマーノは不機嫌なままイギリスを見返した。道理で今日着ていた服がハイネックだった筈だ。あの野郎、と内心一人ごちる。 イギリスだとしても婦女子に狼藉を働くとは何事だコノヤローと腹に据えかねて、ロマーノはふん、と荒く鼻息を吐いた。 「弟が何を知ってアンタを連れて帰って来たのかは知らねーが、フランスのいいようにされるのは癪だし、ここにいればいいんじゃねーの。…説明は今したばっかだけど…、…別に嫌じゃ、ねーから…」 最後の方はぽしょぽしょと小さく付け加えて、チラリとイギリスを見遣ると、ぽかんとした表情に行きあった。ツチノコやネッシーでも見たかのような顔をして呆けている。 だからロマーノは仕方なく一度くしゃりとイギリスの頭を撫でてから、軋むベットから降りて部屋を出ていった。 ≪back SerialNovel new≫ TOP |