■【裁きの剣】■ 20

ハックシュン!
盛大なくしゃみが静寂で満ちた大気を揺るがした。


【裁きの剣】


「…何やってんですか…」
呆れたような声の主を、月は恨めしそうに見上げた。
「…何でお前は平気なんだ」
「私は夜の外気に慣れてますからね」
「僕だって慣れてるよ」
「行軍の際に野営するのと、外でセックスするのと同じにしないで下さい」
「…じゃあ、お前は外でするのに慣れてるっていうのか?」
ぐすっと鼻を啜りながら毛布にくるまる月に、Lの気怠るそうな視線が向けられる。
「子供みたいなふっかけしないで欲しいですね。ほら、飲んで下さい」
パチパチと赤く爆ぜる炎で温めたお茶を手渡される。それを一口、両手で包み込みながら喉に通して、それでやっと人心地についた。
「来て頂けないかと思いましたよ」
「…僕だって焦ったよ。伝言聞いてすぐに出たけど間に合うかどうか分かんなくてさ」
Lが月の隣にすとんと腰を落として、月は自分がくるまっていた毛布を半分明け渡してやる。
「?」
一つの毛布を二人で分けて、暗闇照らす炎の前、Lが首を傾げて見せたので、月は少し黙り込んだ。
「…もしかして」
「3日前から待ってましたね」
「〜〜〜!」
思わず顔を歪めて、カップを握り締めるのに、Lがクスリと笑った。
「松田さんらしいですね」
「……」
「松田さんに頼んで正解でした」
「何で」
ジロリと睨み付けると、Lの口角が上がる。炎に照らされたその顔は月を挑発しているように強かだ。
「だって考える時間があれば来てはくれなかったかもしれないでしょう?」
それに心臓が主張を強めた。
「…一人で待ってたの?」
「ええ」
「寂しかった?」
「さて」
「来なかったらどうするつもりだったの」
「どうでしょう?」
「人が悪いな」
「月くん程じゃ無いでしょう」
いけしゃあしゃあと告げる口に唇を押しつけてから、額をくっつけて夜陰に紛れるLの、黒い瞳を覗き込んだ。
「これからどうするの」
「…まだ見たい所も行きたい所も沢山ありますからね。予定通りならこのまま南下ー…しましょうか?」
「やっぱりお前の方が人が悪いよ。…僕の事どう思ってるんだ…」
「月くんこそ。また引き止めもしてくれないんですか?」
「………」
「………」
二人が黙って駆け引きしあえば、パチパチという、火の粉が弾ける音だけが、耳につく。
「僕の事が、好き?」
先に口を開いたたのは月の方で、しかし折れたわけでは無いその問いかけにLが静かに息を吐いた。
「どうしても私から言わせないと気が済まないのですか…。子供ですね」
「…それを言うならー」

「好きです」

「…は…、え?!」
『それを言うならお前だって』
その言葉を先んじるように、一言Lが口にした。
「…好きです、と言ったんです。二度も言わせないで下さいよ」
上目使いに睨まれて、月の喉がゴクリと上下する。
「…言うとは思わなかったよ」
「月くんと違って大人ですからね?」
「よく言う」
月が漸く口許に淡い笑みを穿いた頃、Lが自分のカップを地面に置くのが見えて、月も倣う。
するりと長い腕が伸びて来て、月の首に巻きついた。
「…好きですよ…多分」
「…おい」
余計な一言に顔をしかめた月を、Lは「月くんは本当に分かりやすい」などと言って笑う。
「因みに月くんの答えはもう分かってますよ。顔を合わせるなり襲いかからずにいられないくらいに私の事が好きなんでしょう?」
つり上がる口許が許せないと思うくらいに腹立たしく、しかし同時に心地よいと月は思った。
「で、どうするんだよ」
「そうですね。傍にいますよ、最後まで」
それでも不機嫌な声を押し出す月に、Lが艶やかに笑って目を閉じたので、
月は「チクショウ、覚えてろよ」と心の中で呟いて唇を寄せた。



To be continiued



…あとがき…
再びお久しぶりな裁き〜の更新です!のっけからはっちゃけてますかね…!あはは!
やっぱりこの二人を書くのがとっても好きです!
次回はニアとメロが挟まります〜。
data up 2007.06.30


≪back SerialNovel new≫

TOP