■【冬の陽だまり・夏の影】■ 01

 冬の陽だまりが、私をゆっくり暖め、
 夏の影が私に覆いかぶさる。

 さわさわと揺れる、その影の向こうに、お前を見つける。


【冬の陽だまり・夏の影】
―プロローグ―

「夜神、こっちだ」
「ああ、魅上」
 大学を卒業して早5年が過ぎ去った。
「元気そうだな」
「魅上も変わらず」
 照は京都から再び東京へ戻ってきた。検事と刑事という職業柄、バッタリと夜神と顔を合わせたのが数ヶ月前。
「えるも元気だよ」
「そうか。子供達もか?」
「元気元気。えるにばっかりべったりだよ」
「母親には勝てまい」
「確かにね」
 わだかまりもなく、時間が合うときにはこうして昼を共にする事が最近の楽しみだ。
 照が高校に在籍した学年の最後、本性をむき出しにした夜神月と付き合うのは、何故だか心地よかった。
「オーダーはしたの?」
「いや、まだコーヒーだけしか頼んでいない」
「じゃあ、何にしよっか」
 冷房の効いた室内でもまだ熱いのか、ネクタイを少し緩めて夜神月はメニューを眺める。
 その丹精で力強い面持ちを確認してから照は燦々と降り注ぐ夏の陽射しに目を向けた。
 昨日病院の帰り。青々とした木々の作る夏の影に、彼女を見た。
 輝くような笑顔で、走り回っている長男を見つめ、腕の中の長女をあやしていた。
(母親になったのだな…)
「魅上?」
「ああ。私のオーダーはもう決まっている」
「そ?」
 じゃあ、と手をあげて店員を呼ぶ夜神月を真正面から見据える。
「幸せか?」
 少し驚いたような顔が向けられる。それから、何の遠慮もなく、幸せそうに微笑んだ
「もちろん。」


 冬の陽だまりのような、暖かさを、
 夏の影に見つけた。
 彼女が望むものを、
 私が望むものを、
 私は一生与えることは出来ないのだし、得ることも出来ないのだと知って、
 正直、私は安堵した。

 そして、とても…。

 運命の神がいるとしたら、それは非常に残酷だ。


to be continued



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