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久し振りの休息だ。 Ｌは思い天井を見上げた。 そこはただ白いだけの空間で、病院特有のツンっと鼻をつく消毒液の匂いは、特別室の部屋の中まで微かに届いた。それで、ああここは病院なのだと白いだけの天上の意味を知る。 成る程、ここに白はよく似合う。 清潔な感じだとか、一般的な色なのだとか、その他にも色々あるかもしれないけれど、ただここは、生と死を司る色なのだと思った。 死んでゆく私にはおあつらえ向き。 こんなことを言うと、ワタリ辺りに叱られそうな気はしたが、それを叱ってくれる人はもういない。 彼が殺してしまった。 夜神月。 私は一生彼のことを許せないだろう。 私が一生彼のことを憎めないのと同様に。 思い、胸に手をあてた。 心臓が軋む音。これこそが、私にとっての、キラの洗礼か。 とても、苦しい。 「・・・」 静かな部屋に外から見えないマジックミラーで覆われた窓を見やる。 やはりただ白いだけのベッドのシーツを少し手繰り寄せた。 「・・・彼は。」 ヨツバのキラを追っていた時の彼と、私を看取ったと思っていた彼は同一人物なのだろうか。シーツと一緒に引き寄せられた上布団を深く被り、胎児のように丸まって、目を閉じる。 あの手の温度を思いだす。 触れた手は同じど、触れた手は全く違っていた。 彼は同一人物であり、同一人物では無い。 そんな答えが脳裏を掠める。 否応無しに興味を惹かれるキラと夜神月という人物。 それがイコールでつながっているのに、それが同じで違うものだと。 人間、二面性なんていうものがあるのは当たり前で、１枚の表だけの面で終わる人間は天然記念物よりも少ないく、それの変化形か多重人格が存在するのも、列記とした事実でそこに存在する。 そして彼は。そのどれのカテゴリーにもあてはまらないと思った。 一番しっくりくるのは、ただの状況変化だ。 過去があり、現在がある。 私が、過去と違うように。夜神月も過去と違う現在がある。 それが人外の力によって左右されるという事以外、しごく真っ当な時間の変化でしか有り得ない。 だから、と言い訳する。 突然失う悲しみは、日常的にありふれている。何も私だけが体験することでは無いのだ。 現に私は大切な人を何度も失っているし、数日前にもまた失ったばかりだ。 私を慈しみ、育ててくれた人。 私を愛し、理解してくれた人。 「・・・私は」 何を考えているのだろう。 一度仮死状態になり重くなった体同様に脳も麻痺してしまったのか。 「私は負けたのだから。」 今は考えるべきでは無い。 彼が夜神月が、キラとしての記憶を取り戻せば、あらゆる手段で私を殺すのだと知っていたし、夜神月がキラでは無い期間こそが、トリックだと知っていて。 知っていて負けたのだ。 とても、彼らしい。 彼らしくて、彼らしくも無い。 もしも、願いが叶うとして。私は何を願うだろう。 彼がキラでないことを願うだろうか。 彼がキラと知っていて、それでも傍にいることを願うのだろうか。 アイもコイもジョウすらない彼の傍にいることを？ 愛と恋と情を殺して、私を赦さない彼の傍にいることを？ 莫迦げていて、笑ってしまう。 そんな事を願うはずはない。 私は夜神月を赦せない。 彼も私を赦せない。 私はやはり夜神月を悪だと思い、彼も私も悪だと思うからだ。 （強情なのだから） 彼も。私も。 ゆっくり死にゆく私は、ベッドの上で夢を見る。 過去と違う私は、彼をとても、愛していた。 とても。 とても。 とても。 とても 過去と違う私は、今をも、彼を愛している。 陳腐な言葉で綴れば。 この胸が息絶えそうなくらいに。 過去と違う私が、唯一願う事をいえば。 ゆっくり死にゆく私は、ベットの上で夢を見る。 どうか、最後の日に、彼が涙を流さん事を。 空白は終わる。 ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |