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今日はロスも曇り空だ。僕は、ダウンタウンから一人黙って空を見上げた。 太陽が出ていると、感傷さえ阻むように空は色を違える。 曇りや雨の日だけだ。この空が彼と過ごしたかの地と色を同じくするのは。 メロはそう思い、瞼の裏に焼き付けた風景を、目をきつく瞑る事で再現させた。 【幸せの曇り空】 「これは、雨が来そうですね」 Ｌとのサッカー対決で勝ちを奪ってから、そのご褒美にと貰った１日。 本当はＬのように、テニスとかの個人協議でジュニアチャンプにでもなれれば良かったのだろうが、生憎メロはテニスをそこまで好きでは無い。 それにテニスをやった所で今は情報化社会だ。いくらＬを継ぐ者の候補だからと言っても、多数の目から逃れる術は無い。…故に、ニアには絶対負けない体力勝負(…といえば僕が筋肉バカみたいに聞こえるけどね、っは、でも僕は二番だからね。二番。…まあそんなにバカでも無いんじゃない？はっ！)で栄光を掴む事はなかった。 そんなワケで、万能のＬとの対決を挑んだのだ。買ったらお願いを聞いてくれるという条件付きで。 これは自分自身でもいい案だと思った。 もし負けたとしてもＬと一緒にサッカー出来るなんて最高に最高で、それだけで天にも浮かれそうなくらい嬉しい時間だ。だってＬはとっても忙しい。 「どうしますか。走って帰ってもギリギリと言う所ですが」 猫背のＬが少し首を傾げながら決定権を自分に与えてくれて、メロは少し考えてにっと笑った。 「雨宿りしてこうよ。もし雨にでも濡れて風邪なんてひかせられないからね」 「…そんなにヤワじゃありませんよ。…でも、まあそうしましょうか。今にも落ちて来そうだ」 Ｌが小さく苦笑して再びどんよりと重たそうは暗い灰色の空を見上げたので、メロもそれに倣った。 (ラッキーだよね。朝は晴天だったんだからさー) ハウスに戻れば、Ｌを束縛する時間は無くなってしまう。 せっかく、Ｌに勝って我が儘言って貰った時間なのに。 「……」 「……」 感謝するように空を見上げてから、Ｌの横顔を覗いた。 「…」 Ｌは空を見上げたまま、視線を逸らさず些かメロは不安になって来た。 (…迷惑だったのか、な…) ふと思うとその不安は徐々に大きくなって来て、メロは下を向く。 (そうだよね。Ｌぼんやりしてるように見えるけどすっごい忙しいもん…) そこはかとなく失礼な感想を含め、しゅんっとしながら未だ微動だにしないＬを盗み見るように視線をやる。 (そうだよ…ロジャーが車を出すって言ったのも僕が我が儘言ったんだし) そうすれば、こんな所で立ち往生なんてしなくても済んだのに。Ｌは優しいから、僕に合わせてくれたんだ。 そういう思いが足元から急激に襲って来て、メロは強く唇を噛んだ。 「あ」 「？」 不意にＬが声を発して、メロは勢いよく顔を上げた。 (何？大事な用でも思い出したのー？) 「雨です。良かったですね。この分なら、走っても間に合いませんでしたよ…、メロ？」 空ばかり見上げていたＬがにこりとこちらに笑顔を向けて、一瞬体が強張った。 「どうしました。貴方の瞳が今にも雨粒を落としそうですよ」 言って伸びて来た手を、まだ硬直させたままの体を小さく慄のかせ、受けいれる。 少しだけ冷たいＬの掌がピタリと僕に触れて、一度目を閉じた。 「どうしました？」 少し裏びれた住居人のいない軒先の下、Ｌがひょっこり座って、首を傾げる。 メロはそれに喉の奥がひくつくような感覚を覚えながら、自分の頬に寄せられているＬ手と重ねた。 「…Ｌが、本当は帰りたいんじゃないかと、思って…」 小さく吐き出すと、Ｌはその真っ黒な瞳をまんまるにして、更に首を傾げた。 「私、そんな事言いましたっけ？言って無いですよね」 「言って無い。言って無いけど…。もう分かったけど、ただ単にずっとこっち見てくれないのは、雲の様子を観察してただけって分かったけど…。本当は早く帰りたいんじゃ無いかってさ…。本当は付き合いたくなかったのかも、って。だってせっかくの日に僕なんかが我が儘言ってこんな所ー…」 「メロ」 決して強くは無いが、聞き逃すのを許さない声で静かに止められ、メロは口を噤んだ。 「全く困った子ですね。自分の事を『なんか』などと言ってはいけませんよ。特に私には」 「…なんで…」 最初の理屈は分かったが、最後の言葉はどうもよくわからない。 普通こういう場合には『私には』なんて言わないんじゃ無いの？自分を卑下する言葉なんて、などと良く言うけれど。 …Ｌの後継者候補としては、言ってはならない言葉なんだろうけど。 「そんなの決まってるじゃ無いですか」 そんなメロの複雑な心中をあっさりと掃き出すようにＬは微笑んだ。 「私がそうは思って無いからですよ。」 「…」 「今日だってとても楽しかった。メロが私の事を思って提案してくれなければ、私にこういう時間はありませんでしたし。…貴方と一緒に過ごせた時間を私はとても嬉しく思っているのに、そんな事を言われたら私がとても悲しいです。」 Ｌは理由をメロに押しつけずに、それはもう自分勝手に最大級に暖かくなる言葉を言って、メロをじっとしゃがんだまま見つめた。 「…有難う、Ｌ」 言って、そのままＬの首に抱きついた。 Ｌは突然の抱擁に少しだけバランスを崩してから、軽くメロの背中を撫でた。 灰色の空は雨粒をカーテンのように排出して、そこだけぽっかりとした優しい空間を作ってくれた。 おわり …………………… …懺悔… っぎゃあああああああああああっ！ 全く入れたい事が、は い り ま せ ん でしたっ！(泣) おかしいな、おかしいなっ！Ｌがあの座り方になった理由(捏造)さえ書き漏らした、よ？！(泣) 多分Ｌはさ、上から見下ろしながらニアメロに話すような事はしないんじゃ無いかな…と、これ書いてる途中に思いました。(途中かよ！) そんな感じでよく書いてる最中に気づく事や(私がＬをどう思ってるか、とか)入れたいエピソードが噴出する事はよくあります。 それを全部詰めると、いつもの通りあのようなぐたぐたと長い文章になります。ごめんなさい…。 しかし、今回だけは入れきりませんでした。 抱擁までしてしまった二人のその後の会話を、綺麗に転換して違和感なく続ける技術を水野さんは持っておらぬよ…(途方にくれる) メロが懐からチョコを出して半分こしたりっていうエピソードが、書きたかったのに…っ！(仕方ないので『２』って事で書く気は満々！…でも書けるかどうかはわからない) アトガキまで長くてすみません。 ここまで読んでくださって感謝しております。 水野やおき拝 2005.05.18 ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |