七転八倒堂

Ｌが泣いている。
Ｌが泣いている。
涙なんて一粒も流しちゃいないのだろうけど。

【泣いていいよ】

Ｌを泣かすのは、どこのどいつだ。
メロは入り口に立ったまま、窓から月を眺めるＬの背中を見守った。
Ｌは頑なにキラ事件の話をしてはくれない。最初聞いた時につらそうな顔で「…今は話せません」と呟いたので、メロはもうそれで尋ねる事が出来なくなってしまった。
(誰かいて嫌なら…せめて一人の時くらい泣けばいいのにさ)
涙には辛く悲しい成分が沢山含まれている。それを流して、少しは心の負担を減らせるのに。
(ずっと溜め込んだらきっと壊れる…)
その背中はメロが背後にいる事さえ気付かない程に涙しているのに。
「…Ｌ」
トントン、と壁をノックする。
「メロ」
「…泣いていいよ」
「え？」
振り向いたＬはやはり、泣いてなどいなかった。
頬伝う涙の跡すら残さず綺麗なものだ。
「…泣いていいよ。俺が側にいるからさ。」
「………大丈夫ですよ、」
近寄りＬの前髪を手のひらであげた。
漆黒の瞳が露わになる。
「…大丈夫なら何も言わないさ、俺もね。…なあ、そんなに俺は頼りいか？Ｌの気持ちのひとかけらさえ触れられない程、頼りない？」
「そんなこと…」
「僕はもうそんな子供じゃ無いよ。大人になれば全部守れると思う程、子供じゃ無い」
Ｌの瞳がじっとメロを見つめて、メロは笑う。
小さな頃から思い通りにならない事が多過ぎた。でも、何故か大人になれば全部守れるのだと思っていた。…夢だと気付いたのはＬが死んだと聞かされた時だ。
「僕が守れればいいのは、今Ｌが泣ける場所だ」
「………」
「僕が守れればいいのは、ＬがＬである事の出来る全てだ。その為だったら、僕は空も飛べるよ？…ヘリをチャーターしてだけど。
それに、Ｌが今見てた月にでも行けるよ。酸素ボンベ付きだけどさ。」
Ｌの前髪を後ろに撫でつけながら囁くと、Ｌが突然吹き出した。
「…何で笑うんだよ」
「…だってメロ！…ふふっ、いえ、すみません。大丈夫ですよ、月になんて行かなくても。…それに虫歯があっては月には行けません」
「…あ。」
バツの悪そうなメロに、Ｌが笑う。「大丈夫です」ともう一度言った。
「大丈夫ですよ、メロ。貴方は私の笑顔を守って下さいましたから」
晴れやかに笑うＬに、メロはおっかしいなあ…と頭をばりばりと掻いた。
「有難う、メロ」
厚いカーテンをＬは閉める。月の光りはもう入って来ない。
「私も、先に進まなくては」
「その先にあるのが俺だったら嬉しいんだけど」
メロがすかさず言うのに、Ｌは頷いた。
「私もです」

おわり

……………………
…懺悔…
ちゅーさえしてないけどメロＬと言いはります(笑)
泣いていいよと言うのに、笑ってしまうような関係が好きです。
泣いた方がすっきりするけど、泣くのはやっぱり悲しいから。それを吹き飛ばすくらいの笑顔であればいいな、と。
月←Ｌになってます、微妙に。ありきたりですが、お月様を見ながらライトを想うと言う。

虫歯があったら…宇宙に出たらあかんの…でした…よね？ありゃ北極だったかな…？適当です。すみません。

水野やおき
2005.07.11

≪new[3] NOVEL back≫

[0]TOP。