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まっくろな影。 どこまで僕を脅かすのだろうか。 まっくろな影。 どこまで僕を受け入れてくれるのだろうか。 まっくろな。 闇の中で君はどれだけ僕を許してくれる？ 【影遊び】 「あー…楽しい！」 僕らは大通りを外れ、街灯の明かりも少ない夜の闇を掻き分け、歩く。 「それは、良かったです」 オーケストラの定期演奏を見てから、ニア達がバスに揺られて帰る中、Ｌは僕の我が儘に付き合って、一緒に歩いて帰ってくれる。…それが、嬉しい。 「やっぱり僕は出だしが派手な方法が好きかな。パァーン！って音が弾けるの聞くと気持ちいい」 僕が頭の後ろで腕を組んでそう言うと、一歩ぶん程後ろを歩くＬが「そうでしょうね」と微妙に笑いを含んだニュアンスでいうので小さくふて腐れる。 「別にそうじゃない曲が嫌いなワケじゃ無いんだ。そればっかりだと飽きるし」 「ええ、そうですね」 今度こそＬの返答には笑い声が混じっていてメロはふてくされる。 口の中で「どーせ」と呟く。口に出して言えばＬは更に笑うだろう。Ｌが笑うのは好きなので、別にいいのだけと…別に。 「…あ、Ｌ。この公園来た事ある？」 ふと脇を見るとどこの公園か知らないが、公園が、ある。 「いいえ。来た事は無いですね」 「ふーん。じゃあ寄って行こうよ。ねぇ、Ｌ。目、瞑って」 「…？目、ですか」 小さく首を傾げたＬに、メロはうん、と頷く。 「Ｌ、一度来たら全部覚えちゃうしさ。そんなのばっかじゃ面白く無いだろ？だから、ゲームみたいなものだよ。…ちょっとした、ね」 ほら、と促されてＬが目を瞑る。 「入り口にちょっと段差があるから」 言って、Ｌの手を引く。 じんわりと伝わる体温に、もしかしたらただ手を繋ぎたいという口実だったのかもしれない、と思った。 「…不思議ですよね、目を瞑っただけで世界はこんなに違うんです」 「…どんな感じ？」 そうですね。 Ｌは少し思案してからぽつりと答えた。 「世界で私一人しかいない…というそんな感じ…ですかね。…足が感じる土の感触。肌が感じる風、肺が感じる空気の粒。緑の匂い。…総てが私一人しかこの世にいないのだと伝えているようでー…」 「…「でも」」 メロが口を開きかけた時に、柔らかくＬの声が響いた。 「でも、メロの手があるので」 それで、泣きたくなった。胸が激しく締め付けられて、呼吸もままならない。 ぎゅっと、手を強く握って、離す。それからばっと走って距離を置いた。 「…メロ？」 ふっと消えた温もりの名を呼ぶＬにメロは『ストップ！』と声を上げる。 「…目も開けちゃ、ダメだ。…Ｌ」 不意にメロの内に込み上げ来たのは溢れかえる充溢感と、言いようの無い不安。 信頼してくれている。 愛してくれている。 嬉しい筈なのに、 嬉しいのに。 この恐怖はどこからやって来るのだろうか。 メロが手を離せば、Ｌは独りを感じているだろうに。 何をしているのだろう、僕は。 『今すぐＬの元に戻るんだ！』 内なる声がメロを命令する。 …けれど、足は固まったようにその場から離れなくて。 「…える…ここまで、来てよ」 ほろりと言葉が零れ落ちて、逡巡も無くＬの足が一歩を踏み出す。 「動かないで下さいね、すぐ行きますから」 少し張り詰めた声にメロの体は竦む。 いつも余裕たっぷりに振る舞えるのに、何故。 何故Ｌの前ではこんなにみっとも無くなるのだろう。 Ｌが確実に一歩を踏み出す。 それは迷いも無くメロのいる方に向かって来ていて、メロの目の前には、溝が敷かれていて。 他愛の無い水路だ。 アートとして作られた水路の為、足元には光源が充分とられていて。 でも。 今Ｌは目を閉じていて。 「止まれっ！」 怪我をしてしまう、Ｌが。 思って声を張り上げて。 しかし、返って来たのは酷く静かな… 「嫌です」 否定の言葉と、確かな足取り。 「…止まれっ！止まれっ！！止まってよ、Ｌー…っ！」 「嫌ですよ。アナタが泣きそうなのに、傍にいないなんて」それで、涙が一粒零れ落ちた。 危険が目の前にあるのに、気づいているのかいないのか。躊躇う様子も無くメロの声だけを便りに歩いてくるＬを目を見開いて見る。 「メロ」 「っごめん！」 優しい声に弾けるようにＬに飛びつく。 それにすってん！とひっくり返ったＬの上で『ごめん』を何度も繰り返した。 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |