七転八倒堂

「よお…」
「…こんにちわ。まだ生きてますね」
「お前こそ」

【格好の良い死】

「二人は死ぬ事が怖く無いですか？」

「Ｌって格好いいよな！」
「…」
「…そうですか？」
メロが声を弾ませて言うと、ニアは玩具を操りながら小さく頷いた。
「そーだよ！だって世界の名探偵だぜ！死線をくぐって謎を解く」
輝く瞳でそう言うメロに、彼は小さく笑った。
「…なんだよ、笑うなよ。そういえば、アンタＬ見た事あるのか？」
「私が、ですか？何故？」
「ふふんっ！Ｌのお使いの癖に防御が薄いんだな！ロジャーの部屋の隣で聞いた、なっ？ニア」
「…メロ」
メロが意気揚々と言うと、ニアは半眼でメロを見やった。それを彼は面白いものを見るように見る。
「…仮にもＬのお使いですよ？そういうことは言うべき事では無いと思いますけど」
「ばっかだなー。だからイイんじゃ無いかよ。いわゆる売り込みってヤツさ」
「…それをＬがどうとるかなんて分からないじゃ無いですか…メロは早計です」
「…お前は臆病なんだよ…」
「「…」」
「…ふっ。二人共似たもの同士ですね」
「「…」」
途端に嫌そうな顔をしたメロと、無表情だが微かに眉間に皺をよせたニアがお互い顔を合わせて、それから彼を見た。
「…どこも似て無いですよ…」
「こいつと同じ意見なのは嫌だけど、全くその通りだ」
「そうですか？…見た事、ありますよ」
「…は？」
「…Ｌの事、ですか？」
「はい。」
「ま、マジか？！どんなヤツ！？格好イイか？」
「…そうですね、格好悪い人間ですよ」
「は？！」
「えっ！？」
彼の言葉に、ニアとメロが目を剥く。
それにまた彼が笑う。
「な、な、何て事言うんだっ！」
「そうですよ…Ｌは私達の…」
「何故ですか？」
「何故？」
「何故そう思うんですか？」
「…それを、『Ｌの後継者候補』に言うのかよ」
「…そうですよ。第二のＬにならんとする私達にそんな事。間違ってもＬのお使いの方が話される台詞では無いです」
二人の鋭い視線に、それでも彼は涼しい顔で返す。
「死ぬ事は、事件の為に死ぬ事は、けして格好良い事じゃありませんよ。惨めでも、生きるんです」
「「…でも」」
声が重なって届く。
「『私』は死ぬ事が怖いですよ、ニア、メロ」
にっこりと笑って彼は踵を返す。
「あ、アンタ！」
「どうやっても、生き長らえましょう。…Ｌにアナタ達の事は言っておきますね」
「…ちょっ、まっ！」
「え、Ｌ？！」
すたすたと歩いて行く彼がちらりと振り返って、微かに笑みを浮かべた。

おわり

…………………………
…あとがき…

実は去年の秋頃の作品です。
もう少し長くしようと思ってつらつら書いていて、放置していましたが、初期のまままた復活。
二部の二人にそわそわしていて、願いを込めて書きました。
因みにＬは生活用品などを持って来てくれる、ただの青年、と院には説明してあります。でもロジャーは知ってます。ニアメロはＬに近づきたいが為にロジャーの部屋で会話を盗み聞いてＬがＬのお使いだと踏みますが、実はＬ本人でした、なオチ。
Ｌは生きる事に貪欲だと思います。潔いけど、貪欲だと思います。
ああ、なんだかよく分からないモノになってしまいました…お付き合いいただき有難うございます！
2006.06.08　水野やおき

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