七転八倒堂

『ご褒美（織叶）』

「なあ、なあ。叶く～ん？」
「何だよ」
　ゴールデンウィーク最終日、背後から聞こえる声に叶は訝し気に振り向いた。
　そこには、今年から三星にやって来た、外部生、織田裕行の長身がある。
「『何だよ』なんて冷たいやん。俺とジブンの仲やないか、な？」
「・・・どんな仲だよ」
けったいな関西弁を引っさげてやってくる織田に益々叶の眉間には皺が刻まれる。
「マウンドで放る姿今日もカッコ良かったで？」
　にやり。（ニコリとは絶対見えない）
　…と笑った笑みがそろりと叶の顔面に近づいてきて、ふいっと顔を背ける。
「そりゃ、どーも。どうでもいいけど、俺、外走りに行きたいんだけど」
「へえ。そりゃ奇遇やな。俺も丁度外走りたいな～と思とったところやねん。ご一緒してもよかろか？」
　どう考えても、普段の３割はからかってる要素が高く思えるその調子に、叶はぐっと顎を引いて、きっぱり「い・や・だ・ね」と言い切った。
「オレは一人で走りたいから、一人で走るっ」
　織田のペースに乗せられては調子が狂う、と叶はスタスタと織田を置いて外へと向かう。
「なんでーな。一人で走るも、二人で走るも同じやろ？ジブン抱えて走るってワケやないんやし」
「誰が抱えられるか」
　ぺたぺたと、木造の廊下を裸足で歩く叶に、織田は小さく笑う。
「そんなんモノノ例えやろ。本気にせぇ・・・、叶っ！」
　ひょい。
　口でその瞬間を表現するならば、まさにその一言で叶は織田の腕に抱えあげられる。
「・・・っな///！」
　今抱えられて堪るか、と宣言したばかりなのに、行き成りその状況になって、叶の頬が朱に染まる。
「織田っ、テメエ！」
「あー。堪忍や、今のはホンマ仕様が無いって、勘弁してーな。画鋲、踏んずけたぁ無いやろ、叶も。」
「ガビョウ？」
「せや。足元、見てみぃや。ホンマ誰が落したんか分からんが、危ないなぁ。っていうか、叶、ジブンちゃんとスリッパ履きいやって言ったやんか。投手やからって、手以外は怪我していいちゅうもんや無いやろ」
「・・・。悪かったよ」
　ゆっくりと、廊下に下ろされて、むっつりと叶は唇を尖らせ、謝る。
「まあ、これで貸し一つやな。そんじゃ、その貸しの代わりに付いて行かせてもらおうやないの」
「はあ？！」
　にっと笑って、先を歩き出す織田に、ととっと小走りで追いつく。
「何でそういう話になんだよ！？」
「何でやいうてもなー・・・」
「オレ、お前と2人っきりになんの、ヤなんだけど」
「・・・あちゃー。そんなハッキリ言わいでもええんちゃう？」
　仕方なく、靴を履き、寮監のオジサンにトレーニングに行って来ます、と伝えてから、むっつりと呟く叶に、織田は苦笑するしかない。
「だって、お前、変なコト言うし。」
「叶が好き、とか？」
「ッツ！！！だから、そういうのヤメロって言ってんだろっ！！」
「何でや。好きなモンは好き。思ったことを素直に言うんは大阪人の常識やで？」
　いっかな表情が変わるでも無い織田の姿に、ぐっと歯を食いしばって、叶は吠える。
「何が常識だっ！！そんな常識捨てろよ！せめて、言葉を増やすとかっ、回数を減らすとかっ！！誤解されんだろ？！」
　あまりの声量に、あちゃー、と耳を塞いだ織田が、聴力の加減を確かめてから、手を外し、くっと唇を持ち上げた。
「なんや。誤解とか、まだそんなコト言うてん？そりゃ、投手としても、好きやがな。オレは、叶のコトが不純な意味で好きやていうとんのよ？」
「Σ不純？！」
「せや。キスしたいなー、とか。エッチしたいなーとかいう不純な好きや」
「Σ！キキキキ・・・っ？！」
「なんの動物の鳴き声や、それ。・・・顔、真っ赤やで。叶」
「うううううるさいっ！！！」
　にやっと笑って、驚きのあまり、立ち止まってしまった叶を道の端へと追いやる。
「そんで。まー、惚れとるヤツの頼み、バッチリ叶えられんかったのは、悔しいけどな。」
「～～～～っ！！！」
「一応、な？点いれたさかい。これくらいのご褒美あっても、いいやろ？」
「・・・は？！Σ！！」
　すっと唇を掠めとられ、至近距離に「ごちそうさん♪」と笑う顔を驚愕でマジマジと見つめ。
「いいわけあるかああああああっ！！！！！！！」
　バチーン！！！！
　強烈な平手打ちをお見舞いする。
「イタタタタ・・・」
「グーじゃ無かったの、感謝しろっ！！オレは、帰るっ！！」
　ダッシュで元来た道へ消えて行く叶の後ろ姿を目で追いながら、織田は叩かれた頬を押さえて天を仰いだ。
「・・・ホームラン打った日にゃエッチさせてくれへんかなー・・・」

END

†後書き†
あはははは！（ハイ）
初めてのオダカノ（略し方、オダカノで良かったみたいだ、ワッショイ！）です！
めちゃくちゃ楽しんで書けましたぜ！（ウハウハ）
やっぱ水野の書く文章ですから、アレさが浮き彫りなんですが。
本人はそれでも、半分満足です（半分なら満足言わんのでは・・・）！
しかし、織田と叶・・・。きっともうしばらくっていうか、かなり。ええ。もう３年くらいは出ないんじゃないかと思うくらいのキャラですが。
萌は永遠不滅です（笑）
勝手に捏造して、捏造して捏造しまくります！！ファイトー！！いっぱーつ！

書き終わった本日は、実は阿部の誕生日なのですが。
とあるサイト様で、阿部の誕生日だと知った水野は、
「こりゃいかん！早くオダカノを完成させねば！！」と、そこはかと無く、夜更かししてます（笑）
だって。先にこっち書きたかったんだもの。

本当は、ご褒美と称して、織田が叶を食っちゃう（外で）話しの予定だったのですが。
キス止まりで終わりました。
やっぱり楽しみはとっておかないと。
いきなりガツン！とエロを書くのも好きなんですが。
ジワリじわりと落されていく様子とか、あれやそれやと手を出していく様子を書くのも、
大好物です！（きぱっ！）
この辺が連載好きの血の定めか…。
よろしければ、感想などをいただけると。
猿が木に登ります。（笑）

因みに、純粋なスキでな無く、不純なスキ。
不純なスキっていう言葉が何故だか好きです。

続く≫

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