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僅かに笑顔を見せるニアに、わざと不機嫌を装って吐き捨てるように言う。…それでもニアは穏やかで。 (…ただ並んでジェラード食ってるだけだろ？どこが楽しいってんだ) ニアは推理以外の説明では雄弁な方では無いし、メロも特に会話をしようとは思わない。 確かにジェラードは美味しいが、『楽しい』という気分には程遠い筈だ。 しかし、ニアは尚も「楽しいです」と重ねる。 「だって、こんな風に二人仲良く並んでるなんて事、久しく無かったですから」 (仲良くなんてねーよ) 心の中でだけ呟いて、ふぅ、と息をついた。 この間、あんな風に強引に、選択肢など与えずに迫って来たというのに、今はこうして隣に座っているだけで楽しいのだと言う。 (ワケわかんね) メロとしても、まあ以前みたいなのよりも、まだ今の方がマシだとは思うが、それでもニアの心の内なんて依然謎のままだ。 まあ、ライバル(の筈)でしかも同性のメロを好きだと言う時点で、心底理解出来なくて当然の話なのではあるが…。 (…スキとか、ワケわかんねぇし。…) 何度『分からない』と自問自答した事だろう。 (…なんか負けてるみたいでムカつく…) 気の抜けていた心に苛立ちを感じてニアを睨む。ニアの静かな視線と再びぶつかった。 「…！」 (なんでそんなに真っ直ぐ！) 見つめているのだろう。 「…な、」 「メロ、手が…」 「な、…あ？！うおっ」 うっかり考えに没頭して食べるのを忘れていたジェラードが、手を汚している。 「…溶けてしまいましたね」 慌てて残りを啜って、味わう暇も無くバクバクとかじり、水場を探す。 頭がキーンと冷えて、少しだけ思考力が衰えたメロの手を、そっとニアに取られて視線を向た。 そして、その行動に目を剥く。 指先から送られる、生暖かくて柔らかな舌の感覚…。 鈍った頭に一気に生暖かい舌の感触が走り抜けた。 「なっ…離せッ！」 頭が真っ白になったのも束の間、力任せにニアを振り切った。目眩に似た感覚で頭がいっぱいだ。キスされるよりも一層特別扱いされているように思えて、心臓が自己主張を始める。 (…何だよ！何だよ！ニアの奴！！) ずかずかと舐められた手を庇いながら早鐘のような心音の勢いに任せて立ち上がり足早に歩きだす。 「…メロ…！」 振り払われて、少し体勢を崩したニアの声は無視した。 「そっちには出口も手洗い場もありませんよ…！」 「！！」 指摘に小さく舌打ちして、仕方なく踵を返す。 その足に余程、力が入っていたのだろう。サンダルの鼻緒がブツリと音を立てて千切れ、思わぬハプニングにメロはぐらりと体勢を崩した。 「メロ…！」 ニアの方につんのめって、支えようとする体に抱きつくようにする。 危うく転ぶのを免れたと思った瞬間、抱き止めた衝撃でたたらを踏んだニアがそのまま花壇に突っ込んだ。 「～～～…」 (これだから運動音痴は使えねぇ…) 押し倒すように二人して転び、ニアをクッションにしたまま、メロは小さくため息を吐いて毒づいた。 ニアにしてみれば、立つ瀬が無いが、メロとしてはこれくらいが当たり前。だが助け(ようとし)てくれた相手にそんな事を言う程礼儀知らずでは無い。 「…オイ、大丈夫か…よ…」 そこで、少しだけ身を起こしてニアを見遣った。 「大…丈夫…です」 頭を打ったのか、固く瞼を閉じたまま、手で頭を擦るのに、メロは渋い顔で顔を寄せた。 ニアの運動音痴のせいなのに、メロを助け(ようとし)た、そのお陰で頭が悪くなったりされたら堪らない。 「頭打ったのかよ、鈍くさいヤツだな…ちょっと見せてー…」 みろよ、と続く筈だった言葉は、ニアの「たいしたことはありませんから…」の後に続く筈だった『大丈夫です』という言葉と一緒に凍りついた。 視線が吸い込まれたように、動かせない。 まるで、メデューサの瞳を覗いたかのように、体が石化して、ちっともいう事を聞いてはくれなかった。 あとは、説明など野暮なことしなくてもお分かりだろう。 ここで漸く冒頭に繋がるワケだ。 『痛み』が消える兆候など一つも無くて、ニアが体内から出て行った瞬間、メロは大きく息を吐いた。 (…やっと解放される…) 頭もズキズキと痛んで、メロは呼吸を整えると共に、額を抑えた。 それからゆっくり瞳を開いて、薄闇の空を見上げる。 (なーにやってんだ、オレは) ニアの体重を感じながら、瞼を伏せた。 「…ごめんなさい、メロ」 漸く我に返ったらしいニアの消え入りそうな声が耳に届いた。 「この、バカ」 最後の言葉はニアに向けたのか、 それとも足元に転がった、気合いの入らないサンダルに向けたのか、 そして、それとも。 自分自身に向けられたものなのか、 メロは一言そう呟いた。 END ……………………… …懺悔… すっごいお久しぶりのニアメロです…！ニアメロ目当てにいらっしゃって下さったお客様には大変申し訳なく思っております！…ごめんなさい…！ 久しぶりのニアメロですが、これを書き始めたのは一年半前の事でした。 うだるような暑さの中、アイス食べたい、サンダル痛い、ニアメロ萌え！…そんな発酵した脳で書き始めて、なんと二度の夏を越えました。…ジーザス！ 寒い中、アイスネタですみません！中途半端にエロですみません！長くてすみません！世界中に申し訳ありません～！！ 少しでも楽しんでいただける事を願って！ (ニアたん自分だけ酷い…！) 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |