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※この作品は月×Ｌパラレルです。 ※オカルトなので、幽霊とか、怖いの苦手な方はお避けください。（まったく怖くないと思いますが…） ※ちょっとエロ入ってます。 ※しかもＬが女人です。 ※その上、月くんが死んでます。 ※めちゃくちゃな高知弁が入ってます。（本当に申し訳ない） ※フィクションです。（当たり前ですが） 以上をご理解くださった方のみスクロール↓↓ 「はい、竜崎、朝ご飯」 【愛し、逢いたし、恋し沼】 ハッとして目覚めてみても、そこに愛しい人の体温は見つからない。 泣きすぎて、頭が酷く重く、痛い。 大学時代からずっと同姓していて、卒業して就職して。 お互い最近は忙しくて、あまり会話さえしていなかったけれど。 （どうしてもっとこの時間を大事にしなかったのだろう…） 月くんを亡くして早くも一ヶ月が過ぎた。 その間の私はというと、魂が一緒に逝ってしまったかのように月くんのいない部屋でこんこんと眠り続けている。 （月くん…） そんな私を心配した月くんの妹が先日私を見舞いに来てくれた。 彼女も大好きな兄を亡くしたばかりだというのに、気丈に振舞って私を元気づけてくれようとする。 兄妹だから些細な行動や表情が、似ている。そんな愛しい人の面影に少しだけ慰められ、それ以上に苦しさに駆られて、私はまた泣きながら床についたのだった。 （恋し沼…） 粧裕ちゃん…月くんの妹がポツリと呟いた一言だった。 ぼんやりとしか彼女の話を聞いていなかったが、何故かその単語が頭の中に引っ掛かって、私は雨のせいで薄暗い部屋の中でＰＣの電源を入れた。 ブゥン…と仄暗い明かりが灯る。 ブラウザを起動し、検索をかけてみる。 『恋し沼』 以外にあっさりとひっかかった。 今、流行っているオカルト用語だった。 ▼『恋し沼』 死んだ恋人に会える、秘密の沼。 けれども、最後には一緒に連れていかれる。 何人もが行方不明になっている。 「恋し、沼…」 普段だったら一笑に付しただろうその話題を、この時の私は魔に魅入られたように興味を持った。 このまま一生を過ごすなんてとても無理だと思った。 自殺なんかしたら、月くんに怒られてしまうと思ったけれど、連れていってくれるなら…、もし、霊がいて、一目でも会えるなら…。 そんな一念に憑りつかれて私はありとあらゆる検索をかけて、その秘密の沼を追った。 本当に。 もし、本当にそんな沼があるのなら…。 「高知県…」 その中の一番有力であろう場所を発見して、私はぽつりと呟いた。 寝食を忘れて調べつづけて一週間のことだった。 「…太陽が、眩しい…」 夏に入ったばかりで、太陽の輝きは容赦なく私を射る。 ギラギラと生命力溢れる陽光は、今の私には殺人的だ。 流石に昨日一晩寝はしたが、今までの疲労がそんな簡単にとれるはずがない。 電車を乗り継ぎ、バスを乗り継いで降り立った山間部で、私はどっちへ行ったものかと眉を顰めた。 この辺は土地勘のある者のガイドがないと迷ってしまうらしい。 「おお、おんしゃあ竜崎ゆうがか？」 背後から突然声が聞こえて、私は思わず飛び上がりそうになった。 停留所にある掘っ立て小屋から老人が一人、出てきて皺皺の顔でにかっと笑む。 「…はい。もしかして、宿の方、ですか」 「そがい、そがい」 恋し沼の付近には、小さな山荘がある。 予約をした時に始めてのお客で、一人だったことで、女将さんが一人では迷ってしまうかもしれない、と言っていたのを押し切ったが、きっと心配して人を用意してくれたに違いない。コクコクと頷く老人に、私は「宜しくお願いします」と声をかけた。 「…そいじゃあ、いくぜよ」 「！」 すっと老人の手が伸ばされて、手を取られる。あまりに驚いて手を見つめたまま固まっている私に、老人は歯の抜けた、しかし快活な笑顔で「こけんように繋いどるだけやき」と笑った。 「…はぁ…」 無碍に払うことも出来ずに、手をひかれたままで、山道に入った。 都会育ちの私には確かに獣道のような山道は難関で、小さな老人の以外に逞しい腕に引かれて中腹まで辿り着く。 「少し休みーや」 「いえ…」 ぜえぜえと身体全体で息をしながら汗を拭うと「そんなに焦らんでもええが」と手近な切り株に座らされた。少し開けたここは、どうやら休憩所であるらしかった。 老人は私の隣の地面にどっこらしょ、と座るので、慌てて切り株から立ち上がろうとすると、ぐいっと手を掴まれる。 「娘さんじゃきええが。そんに、わしらぁ慣れとるき」 にっこりと笑われると、逆らうのもどうかと思って私はそのまま「有難うございます」というと、ちょっこりとその切り株に身を預けて遠く見える地上を眺める。 （もう少しで行きますから…） 「おんしゃ、恋し沼が目的じゃろうが」 「えっ」 ドキっと心臓が跳ねた。 「そうゆう目ぇしとるがに。つらーて、つらーて、仕方がないっちゅう目ぇやき、すぐわかるがよ」 「………」 「まあ、これでも食べながら聞きくがえーが。握り飯と卵焼きだけじゃがな。どうせろくに食べちょらんのやろうが？」 「………」 「わしはもう、食っちょうき、気にせんでええぜよ」 「………」 風呂敷に包まれた握り飯と、脇に添えるように置かれた二つの卵焼きに私が目を細めて眺めていると、老人は遠くを見ながらポツリと呟いた。 「…わしも恋しい人と死に別れた…」 「………」 「人はいつか死ぬもんじゃと頭の中じゃあ分かっちゅうつもりじゃったが、恋しくてたまらんもんやき」 「……お爺さんも、それでここに…？」 地面に座る老人の横顔を見る。老人は思いを馳せるようにして遠く、遠くを眺めていたので、私は答えを知った。 嗚咽が喉を吐きそうになる。 「じゃけど、おんしゃあ、知っちゅうか。恋し沼に行っただけじゃあえんがよ」 「え？」 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |