七転八倒堂

『…と、いうワケで、安心してくれていいぞ』
その電話に日本は心からの有り難う御座いますを告げて、暫く会話した後、通話を切った。
（さて、これはどうしたものでしょうね）
事の次第を教えてくれたイギリスの通話は、事件初日より５日後の事である。
いきなりキスなぞされて、しかもその理由がとんでも無かったので、つい取り乱してしまったのが今となっては考え過ぎと相俟って懐かしいような気さえする。
あの日は適当にお茶を濁して、朝一で仕事ですからね！と追い出して（元々仕事の予定だったのが幸を奏して、比較的簡単に追い出せた）、すぐさま有給を無理やりもぎ取って、イギリスに飛んだのだった。心情として『助けて！』の一言である。
余りにも有り得ない展開だったので、パニックから抜け出せなかった日本は着の身着のままの状態で、アポイントメントも取らずにイギリスの家に駆けていったのだった。あんなに必死になって走った事なんて半世紀ぶりだ。頭の中は早くしないとアメリカが来る！でいっぱいで…。
（我にかえればお恥ずかしい限りですが、背に腹は変えられませんよね）
元々急激な変化は苦手な方だ。いきなり迫られて相手をしろと言われても困るのだ。アメリカの事は嫌いでは無いが、恋人とかでは無いと思っている。
（爺は若者のテンションにはついていけません）
彼との関係をあえて表すとすれば爺と孫の気分でしか無い。
彼らとの出会いからしてそうだった。近所の孫のような子がせがむから、都会に一緒に出てみたら、外は目まぐるしく変わっていて、駅のホームで迷子になった所を助けてくれたのがちょっと年下の爺さん。それがイギリスで…そんな感じだ。
再び困っている所を助けられて、何か歯車が一つ回った気がした。
感激して抱きついてしまったけれど、その時嗅いだ控え目なバラの香りに、一瞬くらりとしたのがその予感というヤツだろうか。
日本は昔から、あの人の強かで、けれど繊細な所を嫌いでは無かったのだ。
だから先日イギリスと別れて家路についた頃、今回の嘘が真になってしまってもいいかな、始めてみてもいいかな、と思うくらいには好いていた。だからこそ、アメリカに電話でお断りの言葉を言った際にも、疑われなかったのだと思っている。
（…けれど、そういう巡り合わせではなさそうですね）
感はいい方だ。イギリスの言葉の端にフランス存在の匂いがした。以前にもそれはあって、けれども立ち位置を動かすつもりはなかったように思えたのだけれど。
長く永い時間を生きていても、人生はしょせん一期一会である。
枯れかけた爺さんの花壇には沢山の花の種が蒔いてあるけれど、どの花が咲くのかは誰にも分からない事で、
日本自身は一生一人でもいいし、寄り添う人がいるのならそれでもいいと思っている。
まぁ、なるようになるでしょうと、日本は仮初めの恋人へのお土産を何にしようかと考えるのだった。

end.

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大変申し訳ござ候。はじめまして、水野です。
そうではない方はいつも有難うございます。お久しぶりの方もいらっしゃいますでしょうか。
APHでは第一弾のUPです。分かりにくいカプ表記で申し訳ありません。
最初はアメリカの思いつきに振りまわされる爺二人のドタバタコメディを書こうと思って、
書いていたら、英日になったので、英日にほのぼのラブストリーにしようと思ったんですが、
アメリカが思った以上に粘ってフランスの所に行ってしまい、兄ちゃんもつられたのか、頑張ってしまい仏→英になり、米→英要素も加わってしまい、
カルテッドなのに、にっさま視点が無かったので、にっさま視点のおまけを書いたら英日英っぽくなりました。
…英受けが好きなので仕方ない。（おいこら）
続きは特にありませんが、ルート分岐があるなら、正規ルートが仏英で、仏英になれば、にっさま方面はいつか日台になると思います。
裏ルート（？）が英日英。初めてのちゅーは祖国から静かに、ちょっと背伸びしてのちゅーに決まっている。（笑）初エッチは当然（？）英日でしっとりした甘エロだと思っている。キッパリ。このお話では、肉体的な日英は無いはず。精神的には日英、肉体的には英日、そんな感じ。
最後に隠しルートで米→英でしょうか。米英ルートと米日ルートは存在しないよ。うちにそんなサービスはないよ。
米→英ルートは、嘘がバレた場合でしょうか。メリカが「君はいつも嘘ばっかりだ！」とか言って、若かりし頃のもやもやを爆発させればいいと思うよ。
update 2011.03.27

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