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画面にはなるほど、沢山のコメントが寄せられているようだった。スクロールバーが小さい。 内容は『信じられないよ～』とか『エイプリルフールは四月やでー』などという否定的なコメントが多く見受けれるようだが…。 「おい。このコメントあいつらじゃねーの？」 いわゆるＨＮと呼ばれる名前欄の所がパスタだったりトマトだったりするのだが知り合いにはまる分かりである。 「そーだな。普段はあいつらあんまりコメントしねーんだけどなー」 再び「ふーん」と返事してからキッチンに戻りかけたイギリスは「おい待て」と低く唸った。 視線を逸らそうとした一瞬、タイトルバーに不穏な事が書いてあるのを発見してしまった。イギリスの視力が急激に低下したのでなければそれは『俺様の彼女』と書いてあるようしか見えない。 「…これ、俺のことじゃないよな？」 「お前の事だけど、お前男だから皆わかんねーって！」 ほら、見てみろよ！とスクロールバーが上に上げられて、イギリスは声を失った。 「～～～～～～～～～～！！！」 そこに映り込んでいるのは天使の奇跡で女の子の姿になったイギリスの寝姿だった。 なにやってんだばかぁ！とボコっている間に鍋が焦げたがイギリスのせいではない。 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ いきなり殴りかからなくてもいいじゃねーか、マジ狂暴だぜ、とは思うが、殴り合い…というか最後は手合わせのようになって、こういう付き合いも結構楽しいもんだな、とプロイセンは思った。 因みに「ちょっとイギリスに似てないかい？」というハンバーガーのコメントがあったのが知られたらマジ生きていられないので秘密にするとして。 隣でイギリスが「すー、すー」と健やかな寝息を立てて眠っている。 汗をかいてちょっと湿った短髪に指を通す。先程のアレコレで疲れたのか、小さな反応さえ示さないで熟睡している。 先月「付き合わねぇ？」と言われた時は「どこに？」と問い返したくらい青天の霹靂な出来事だったけど、よくよく考えたらイギリスがあっと驚くような事を言ったりしたりするのはいつもの事だったから、意味合いを教えられて驚きはしたけれど、「別にいいぜ」頷いた。 まだ恋人としては新米だが、この分だと結構楽しい付き合いになるのではないかとプロイセンは踏んでいる。 実はこの方恋人という存在がいたためしが無いので誰かと比べることはできないが（それなりに女にも声をかけられるが、少し話した途端に逃げられる理由をプロイセンは知らない）、格闘もできる恋人とかすげえいいじゃねえか、と思うのだ。 フランスやスペインなんかは元海賊だと揶揄るけれど、プロイセンはその成り上がりの強かさが嫌いではない。 このご時世昔のように簡単にお互い手を出したりしないから、あんな風に攻撃されると思わず昔の血が騒ぐ。 『避けんなバカぁ！』と言われたがにっと笑ってみせると今度はイギリスもにやりと笑い返した。 激動の時代に生きてきたプロイセンにとってあの刹那の命の遣り取りがたまらなく懐かしく思える時がある。 プロイセンは銃でなく剣の方が懐かしい。あの刃の軌跡をかわしながら反撃にでる剣術や肉弾戦の全身を武器とした戦い方が好きだった。 手合わせならばヴェストも付き合ってくれなくは無いが、生と死を分けるようなギラギラした餓えが足りなくて、対峙する時はまだまだ指導してやってるような気持ちになる。 その点イギリスは相手に取って不足はない。 真っ赤になって「ばかぁ！」と言っているのも可愛いと思うし、寝室で見せる艶やかさもいい。けれど、今日見たような酷薄に目を細めてペロりと唇を舐める仕草が一番堪らなかった。 背筋がぞくぞくして久しぶりに気分が高揚した。 きっと鍋から出た煙が視界を掠めなければお互いが動けなくなるまで手を合わせていたに違いない。 あのハイキックは芸術的ですらあった。 思いだすだけでプロイセンの唇が孤を描く。 あんな攻撃的な肉体と圧倒的な威圧感をもっている癖に、どちらかというと貧相といわれるイギリスの体は、この手で撫でれば甘く溶ける。一体どういう仕組みになっているのだろう。 「んっ」 髪を梳く指先が首筋に触れるとイギリスが声を漏らした。 プロイセンは「おいおい色っぽい声だすんじゃねーよ、ヤっちまうぞ」と思ったけれど、明日も会議がある恋人の為に聞かなかったことにして眠ることにしてやった。 明日更新するブログの題名は『彼女に噛まれました』で決まりだろう。 何せ殴れなかった腹いせに、プロイセンの肩にはイギリスの歯形がしっかりとついていた。 ＥＮＤ --------------------------------- 【あとがき】 ある日の一幕。 『幸せの定義（仏英）』の続きだったものを分解してリサイクルしたので、話の進めかたが強引で大変すみません。 ここから、普英楽しい！の道が始まりました。 普英らぶ！！！ up date 2011.07.02 ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |