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※注意書き※ pixivにあげているのと同じものです。 パラレルで普英というか、 ブリ天と青年ギルベルトの４９日の話。だが思いっきりダイジェスト以下。 フリッツ親父の死にネタあり。ごめん。 普英の仲は額にチュー程度。 なんかあんまりハッピーエンド臭はしない。 普がかなり弱ってます。因みに人名使用。 カッとなってやった。殴り書き。今は反省している。ごめんなさい。 空は嫌味なぐらいご機嫌な晴天で、ぽかぽか暖かい。 こんな日には、人間達も陽気になるのか、 天使様であるアーサーの仕事もそんなには無い。 だから、そんな日、 「べっ、別に気にしなくていいからな！俺様一人楽しすぎるし！」 と陽気に叫んだ青年を、今日の仕事の対象にしようかしまいか、少しだけ悩んだのだった。 【甘い嘘】 side ギルベルト 一人楽し過ぎる、と表面上だけ見れば一応愉快なその台詞は、 言葉の意味を咀嚼すると、なんだか猛烈に寂しいようなそんな気になって、 アーサーは上空から思わず地上を見下ろした。 ぽつりぽつりと流れゆく人々、移動する車。美しく囀りながら飛んでいく小鳥。時々現れる妖精さん。 そんなアーサーの視界の端っこに、件の台詞を吐いた男が映し出された。 （あ、こいつか） その男はケセケセと、独特な笑い声を上げて、目の前の女性の前から「じゃあな」と手を上げて去って行く所だった。女性が『ごめんなさい』と言っている所を見ると、どうやら振られたのだろう。 アーサーは上空でパタパタと羽を動かして浮遊しながら、ふむ、と胡坐をかいて、件の男を見下ろした。 アーサーは困った奴を見過ごせない、心優しい天使様だ。人間を幸せにする義務がある。さりとて、その力は非情に些少である。残念ながら。 例えば天使は、一度幸せをもたらした人間に、二度目のほあた☆は使えない。奇跡というだけあって、そうそう起こせるもんではないと決まっている。 そしてまた、奇跡と言いつつ人間の運命を転換する、そんな能力は天使には無い。あるとすればその人間自身の信念や、神サマの気まぐれくらいだろう。 だから、アーサーのような天使に出来るのは、その人間の些細な幸せを感じられるような手伝いをする、たったそれだけの事くらいしかない。 今、目の前の人間を幸せにする魔法といえば、さっき振られた女性のような感じの女が近くを通った瞬間、ぶつからせてちょっと美味しい目を見せてあげる、とかそういう事くらいしか出来ないので、アーサーは少しだけ首を捻った。 天使が一日に使用出来る奇跡の力は有限である。 なんだか不憫な感じの台詞を吐いていたとはいえ、男の見目はすこぶるいい。アーサーがほっといていたって、地力で幸せを勝ち取りそうなくらい悪運も強そうな気もしている。 確かに男は振られたばっかりだとはいえ、そして奇跡の力が些少なものとはいえ、それでも貴重な奇跡の力をこんな所で使っていいものかと思いながら、アーサーはなんとなく彼の後ろをつけてみた。 つけて見る気になったのは、男の落ち込んだ背中がなんだか非常に憐れに見えたからなのだが、天使に目をつけて貰った時点で、恐らくギルベルトという人間の悪運はやはり強いといえたのだろうと、言えた。 ただし、あくまで『悪運』であるが。 「あーあ…。一人寂しすぎるぜー…」 ぽつりと呟いた言葉は、大きすぎる家に吸い込まれて消えていった。 ギルベルトは薄暗いリビングにどかりと腰を下ろして、写真を眺めた。涙は枯れ果てて、元から赤い目が、更に赤く充血していた。プラチナな髪も相俟って兎のようだと言われていたけれど、ギルベルトもなんだか本当に自身が兎のような気分になった。 だって、寂しさで死にそうだ。 目の前にある写真…、親父の遺影を眺めながら、『なんで』と思わざるをえなかった。 なんでどうしてこうなった。 卒業式に、４年片思いをした女に振られ、そして卒業の祝にと一緒に外で飯を食う筈だった父親は、ギルベルトとの約束の時間に間に合わないと急ぎ足で駆けつける途中で事故にあった。 警察から電話が会って、訃報の知らせを聞いた時は、頭の中が真っ白になった。 そして、今もまだ、どこか現実味がない。 どうやって、警察まで赴いたのか、葬儀の手続きをして、喪主を務めて、現在に至っているのか、記憶がなんだか曖昧だ。 ギルベルトはふと溜息をついて、ローテーブルに突っ伏した。 そのまま、顔を少しだけ上げて遺影をぼんやりと眺める。 いい、父親だったとギルベルトは思っている。 片親だったけれど、寂しいと思ったことは、ちっとも無い。 だが、ただ 今、 猛烈に寂しい。 今までずっと二人だった。 でも、これからずっと独りになった。 枯れた、と思っていた眦から、ぼたぼたと涙が零れ落ちる。心は今にも凍りつきそうなのに、泣き過ぎて頭がぼんやりと熱かった。 （天涯孤独っていうやつになっちまったなぁ…） ギルベルトに親戚はいない。いないというか、知らなかった。駆け落ちした時、縁を切られたらしかったから、ギルベルトは親戚を知らなかった。だから葬儀に参列したのも、親父の仕事の関係者ばかりだ。 （流石の俺様も、ほんと参る…） 友達は、つかず離れずな知り合い程度ならいるが、親友だとか、そういう間柄の友達はいなかった。敢えていえば、高校時代の悪友が二人いるが、大学で進路が別れて以来、少し疎遠であるし、以前連絡をとった時、確か二人とも忙しいと言っていたのを覚えているから、呼び出せもしない。 支えてくれそうな恋人も、残念ながらいない。 それどころか、片思いだったマドンナには恋人がいたというオチだった。 不憫だなんだと言われ続けて、一人楽しすぎるとずっと虚勢を張ってはいたけれど、 今回ばかりは、そう言って己を奮起させる事はできなかった。 「…ああくそ、悪魔がいたら、契約しちまいそうだぜ…」 それでも、自分に冗談を言ってどうにかしようとしたのは、尊敬していた親父はギルベルトが泣いてばかりいるのが嫌だろうからだと思ったからで、もしも自分のせいで、天国へ続く道をいけずに彷徨い続けるなんて事は嫌だったからだ。 ただ、そう思えど、心は一向に動かなかった。 だって実体の無いものなんて確認出来ない。 ピンポンとチャイムが鳴って、新聞の集金だったか、それとも近所のおばちゃんか、葬儀の関係者だったろうかと、ギルベルトはぼやけた頭で考えた。 本当は、体を動かす気なんて起きなかったけれど、それでも無理やり立ち上がったのは、兎に角誰でもいいから会いたかったっていうのと、半分はただの真面目さが理由といえただろう。 玄関に赴くと、そこには新聞の集金でも、近所のおばちゃんでも、葬儀の関係者でもなく、ボストンバックを持った一人の青年が立っていた。 「……えっと、」 誰だ？ 見覚えの無さにそう呟くと、少年と言っていいのか、青年といった方がいいのか、目の前の一応青年が、慌てたように、「あの、」と頭を下げた。 「すまないとは思ってる」 「は…？」 「俺の名前はアーサー・カークランド。お前の父親の部下の身内で、少しの間、お前の家で下宿させて貰う事になってた者なんだが…」 「…聞いてねぇ…」 「そう、か。決まったのはつい最近のことだったんだ。こんな事もあったし、どうしようかと思ったけど、他に行くあて無くて…」 「家…、片付いてねぇけど、とりあえず入れよ」 特長的なぶっとい眉毛を中央に寄せて俯くアーサーとやらを、何の確証も求めず家に入れる気になったのは、人外だろうが、悪魔だろうが、犯罪者だろうが、何でもいいから、傍にいて欲しいと望んだばかりだったからだろう。 とりあえず、何でもいい。気を紛らわせてくれるものが欲しかった。 「…悪ぃ」 そう言ったアーサーを連れて、ギルベルトはリビングに通すと、茶を入れてにキッチンに赴いて、それからおもむろにカップを一つ割った。 「ギルベルト？」 カッシャン、と耳障りな音が聞こえたからだろう、アーサーがおずおずとキッチンに入って、それから駆け寄って、ギルベルトの手を取って、近くの椅子に座らせた。 アーサーがやって来て、一度止まった筈の涙が、キッチンに残った親父と一緒に過ごした痕跡を見つけて、また決壊したのを知覚した。 ギルベルトは椅子の上で体を丸めてカタカタと震える体の震えと戦った。 キッチンに残っていたのは、その日、親父と一緒に摂った朝食の記憶の残滓だった。 卒業式の日だからと、親父は少し張り切って朝食を作ってくれた。 少しの張り切りは、いつもなら、食パンとブルストとその前の夕食の残りのポテトサラダで済ませる所に、プラスαでフライドエッグがついてきたのと、インスタントのコーヒーが出て来る所を、その日は丁寧に入れた紅茶であったりと、そんな平凡な贅沢ではあったけれど、ギルベルトはその気遣いがすこぶる嬉しくて、その日は何かいいことがありそうだと『流石親父！』と笑ったのだった。 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |