■【裁きの剣】■ 16

満天の星空を、あなたも今、見ているでしょうか?


【裁きの剣】


「…レスター様。」
回廊の影、薄い闇に紛れるようにして、女が密やかに声をかけた。
「…リドナーか」
甲冑姿の女性を発見し、レスターと呼ばれた男は、そのまま何歩か通り過ぎた後、彼女に背を向けたまま、立ち止まった。
支柱の向こうにあるパティオ(中庭)に目を向け、誰とも話していないように体裁をとり、レスターは耳を傾ける。
「…ニア様から、連絡が」
「…」
「ウェディ達の情報によると、我が国を狙っている上層部を掴んだとか。主格は夜神月。大臣を父に持つ若手のエリートで、既にL様が接触なさったとか。」
「…そうか」
「我が国はもう崩壊寸前。…ですが」
「分かっている。ディビット・ホープ様を失って以来…急速に疲弊している。…だからと言って…内部崩壊を誘うような手を出す奴等を許すわけにはいかん…」
「…我が国が立ち直る確率は確かに少ないものでした…。ですが、確かにあった希望の芽を摘んでまで、我が国を陥れようとする手は最早正義ではありません」
「……分かって、いる。リドナー、ニア様達との連絡を頼んだぞ」
「…はい。ニア様達なら、信じられます」


「…L」
「はい、なんでしょう?ニア」
満天の星空の下、世界を背負うようにして立つLの姿には、いつも畏敬の念を感じる。
伏し目がちな黒い瞳が、まるでこの夜空のようだから、またそう思うのかもしれない。
メロがいたら「綺麗」なんだと言うのだろう。少しばかり、嫉妬する。
「ニア?」
「…あ、スミマセン。Lに見惚れていました」
「ニアは本心を隠す時によく冗談をいいますがー…、深く追求しないであげましょう。ハル・リドナーとの接触は上手くいったのですね」
「はい、つつがなく。…朝日の国は相当疲弊しております。リドナー等が必死で腐敗と荒廃を留めてはおりますが、このままですと、2年は保たないでしょう…」
「やはり、あの策を遂行する他ありませんね。…諍いで傷を被るのは、血を流すのは民以外、他ならない」
「施政者が変わるだけなら痛みは少ない。むしろ、変わる事で民には良い結果になる事もあります。施政者として、エデンは有能と言えはします。…L…」
「…ニア」
静かな夜、ニアの声を攫うのは微かな風と、Lの声音のみ。
月灯りに砂金が混じったように足元が薄く光る。同じくLの纏うベールも、装飾具も仄かに光って見えた。
Lは口許に人差し指をあてて、口角を上げる。
「正義は人の数だけ存在します。私は…私の正義を捨てる気はありません」
静かな、夜。
ニアはゆっくりと頭を下げた。



To be continiued



…あとがき…
ちょっとばかし調子が戻っているような気がする水野です。
そして、予定にはなかった二部組みも組み込んでみました〜vVぅふ!
考えていたのが二部当初だったので、キャラはニアメロ以外には一部オンリーの予定だったのですが、まだ修正の利く段階だったので、追加です。
相手国の話をちょっと書けてなんだか満足です!
このまま進めれば嬉しいなあ〜
水野やおき
2006.04.08


≪back SerialNovel new≫

TOP