■【タイム・リープ〜凍結氷華〜】■ 07

※性描写有り※




初めてその躰に触れてから3日後の夜、二人は当たり前のように
同じ布団に横たわった。


【タイム・リープ】
〜凍結氷華T〜#7


依然として捜査本部の仲間の状況が分からないまま3日が過ぎた。
外に探しに行くことも考えたが、どこにいるか分からない以上あまり広範囲に動くわけにもいかず、月と竜崎は警察庁など重要と思える機関に足を運んで何の状況も把握できないのが分かると、小規模の捜索と、室内栽培の為の作業に身を費やした。
そして夜になって日付と共に内容も更新された夕食を摂取すると、少しばかり腹を休めてからこちらに来て初めての入浴を果たした。髪も体も洗うとこざっぱりしてなんだかほっとする。一頻りワタリに感謝の念を送ってから、先に入浴を済ませて寝床にいる竜崎の元に戻った。
「父さん達がどこにいるか探してくれてるの?」
いつもの座り方で布団の上に座り込み、広げた地図を眺めている竜崎の隣に座り、話かける。
「……ええ。生存者がいるならどこにいるのか…。どのくらいで行けるのか…、どうするか悩んでます」
「……ありがとう」
「何がです?」
きょとん、と月を見遣る竜崎に月は「なんとなく」と答えて笑む。
竜崎は月が家族を探して飛び出そうとした時にも、その後も当たり前の顔をして月の家族を探そうとしてくれた。月が家を一目みたいといえば危険がない限り多分ついて来てくれた筈だ。それは、ただ月の父が局長だから、というわけではない。
竜崎は助けられる可能性のあるものならば、助けに行くのだろうと思う。それがキラでも、キラの家族であったとしても。
それを説明するのは簡単だが、なんとなくそれはしないでおいた。
感謝の念を伝えるのは簡単だが、それを伝えると、それで満足してしまいそうな気がした。そうして晴れるのは月の心でしかない。ならば恩は、竜崎を手助けすることで返すしかないだろう。
心の中でもう一度「ありがとう」と呟くと、月は竜崎の髪が濡れているのに気付いて、少し怒った口調でタオルに手をかけた。
「バカ、濡れたままじゃ風邪ひくぞ。まったくお前はいつもいつも」
「部屋が暖かいので大丈夫かと思いました」
「大丈夫なわけないだろ?」
まったく、と悪態をつきながら、どこかで世話を焼かせてくれるのを喜んでいる自分がいる。それに内心苦笑しながら、大雑把に拭っただけの竜崎の髪の雫を丁寧に拭っていった。しっかりと拭えば風邪を引く前に乾くだろう。
髪を弄られたのが眠りを誘ったのか、竜崎があふっと欠伸をして月はおいおい、と様子を窺う。
瞼がとろんと落ちかけている。捜査本部時代、竜崎の睡眠時間は極端に少なかったが、それでも眠そうという様子を見たことはなかった。最近は、あの頃よりも多めに睡眠をとっているのに眠たそうな表情を見せて、月は僅かに頭を傾げる。体を動かすことも多いので、その分疲れているのかもしれない。その上久しぶりの風呂と来れば眠くなるのも当然か。
このまま寝かせるか、と思ったが、やはりそれは出来ない、と決めて本格的に眠ってしまう前の竜崎の項に唇を這わす。
「…明日じゃダメですか?」
「今日がいい」
竜崎が欠伸交じりに聞いてきて、月は即答する。メロは1週間と言ったが、あの行動力は侮れない。明日来てもおかしくなくて、来てしまったらいつ帰るのかもわからない。数人しかいないのに竜崎と二人別室で、というのもおかしな話なので、そうなってしまうと次に触れられるのはいつになるか分からなかった。
問答無用とばかりに竜崎の顎を捉えると、くいっと背後を見上げさせる形で持ち上げて口付ける。
そのまま滑らせるように風呂上りの為にガウンの襟の合せ目から指先を進入させ、控えめに盛り上がった胸を撫でる。眠たそうだった竜崎の穏やかな呼吸がすぐに高まった。
月の半身に体を預けた竜崎の伸ばした足先が地図を捉えると、行儀悪く跳ね除けた。そのままゆっくり仰臥した竜崎の上に覆いかぶさって、少し薄く小さくなった鬱血の痕を吸い上げた。体のあちこちを撫で回してから、その体の形を存分に記憶に刻みつけようと執拗に体のラインをなぞった。竜崎の言う一回とは月が射精するまで、という意味だ。ならばそれまで存分に味わって次回分まで補給しておかなければならない。
果ては背中をマッサージし始めた月に竜崎が「貴方は一体何をしているんですか…」と怪訝そうに聞く。
「んー?リラックスして貰おうと思って。初めては辛いらしいから」
「はあ」と気のない返事を返した竜崎の、背骨の窪みにキスをする。くすぐったいのか、気持ちいいのか竜崎がふ、と溜息を漏らした。
そうして触れられることへの拒否感を取り除いてから、月は下半身へと移動すると大きく脚を広げさせた。マジマジと眺めてふと顔を上げると、「何が楽しいんだ」といわんばかりに竜崎が嫌そうな顔をしている。それにクスリと「これも初心っていうのかな」なんて思いながら笑う。こうやってマジマジと眺めても恥ずかしがらない竜崎は、まるで赤ん坊のように従順で初心だ。
月は少しも手垢のついていない、ぴったりと閉じた陰唇を割る。既にシーツまでをも濡らしていた蜜が更にトロリと溢れた。指の腹で撫でるとぬるりと滑る。
「あの…、前も言ったと思いますが…そこは関係ないのでは…?」
ゆっくりで優しいリズムの刺激にはぁ、と温む吐息を零しながら竜崎が問う。舌を使って陰核の愛撫を行いながら親指の腹で撫ぜ揉むように入り口を解すことに専念していた月は顔を上げて「そうでもないよ」と真意を悟らせないように何気なく続けた。
「だって、滑らなきゃ入らないもん。普通、アナルを解す時はローションとか使うらしいんだけどあるわけないし。軟膏なんて勿体無くて使えないだろ?ここに天然もののローションがあるんだから活用しないとね。だからしっかり解しておかなきゃ。竜崎も痛い思いはしたくないだろ?」
「…はあ、そんなものですか」
「うん。そんなもんだよ。竜崎はなるべくリラックスしてくれたらいいんだよ」
「リラックス…ですか」
「そう、体の力を抜いてね。でないとスムーズにいかないから」
「…分かりました」と体を弛緩させる竜崎に頷いて、緩やかな愛撫を続ける。竜崎がゆっくりと息をしながら時折体を身じろがせた。
「んっ」
感覚を享受させた場所に人差し指を進入させると、途端に声を上げて身構えてしまう。竜崎に「大丈夫、大丈夫」といいながら月は緩やかに体を開いた。
自慰も知らなかったらしい体は青くて固い。内部を傷つけないように慎重に解して指が馴染む頃になると、月は竜崎自身にすっかり肥大した陰核を指で弄らせた。羞恥も放り出すことも知らない竜崎は、甘く呼吸を繰り返しながら繰る指先を止めはしない。その間月はその唇を竜崎の胸に置き据えて、柔らかく、時に強い刺激を施した。
眠っている性感を測るようにノックすると、徐々に竜崎の呼吸が浅く速くなる。
時折耐えられないというように喘ぎ声を漏らしながら竜崎の指先が動き、くちゅくちゅとあられもない水音を響かせながら、次第に快感を貪り始めた。一度エクスタシーを覚えた躰は実に欲求に忠実だ。
とろとろと愛液を溢れさせていた竜崎の内側が物欲しそうにひくりと月の指を食む。そこに指を増やして、馴染ませると、次第にただの異物ではなくなって来たらしく、刺激を求めるように竜崎が腰を揺らめかせた。
絶頂へと向かう波に竜崎が頭を振る。
上気した白い躰が色づいて揺れる様が実に悩ましい。そしてとうとうビクリと仰け反った。意思ある指先の動きが止まると同時にビクリビクリと竦む。月はその絶頂を終わることを許さずに、手の止まってしまった竜崎の、一番感じる部分に刺激を与える。擦り続けてやると、月の指を締め付けるナカの痙攣も終わる気配を見せずに、リミッターを外した体は快感を持続させたままうねうねと波打った。
「あ、ぁあっ…ライ、と、くっ」
呼吸を止めた絶頂を越えて竜崎が声を押し出す。乱れた呼吸と逃げる体とに、様子を窺っていた月は、その目尻に涙が浮かんだのを見ると、これ以上は無意味だと判断して竜崎を解放した。途端にぐったりと身を伏せて竜崎が全身を弛緩させる。
十分に力の抜けた竜崎が脱力している端で、バスローブの腰紐を解く。媚態を目の前に立派に張り詰めたまま我慢を強いられていた息子を握ると、未だ前後不覚な竜崎の足を持ち上げてぴったりと照準を合わせてゆっくり押し込んだ。
「キツ…」
あれ程丹念に解したというのに、拒むように締め付ける竜崎に、まるでコイツの性格のようだな、などと思いながら、愛液の助けを借りてゆっくり押し入る。
竜崎が目を大きく開いている。目尻に溜まった涙が、つうっと流れ落ちた。別に破瓜に対しての感情ではないだろう。生理的な涙だと分かっているにも関わらず、なんだか罪悪感を感じて「竜崎」と名前を呼んだ。
全てが竜崎の中に沈み、足を解放すると、月はあまり体を動かさないように注意しながら竜崎の上に覆いかぶさった。あらんばかりの愛情を込めてその体を抱きしめ、竜崎が月で馴染むまで頭を撫でていると、「やっぱり」と聞こえて「ん?」と顔を上げた。
「油断も隙もありません。何が『そんなもの』なのですか。ダメだといったのに」
「…でも、あれはあれでそうなんだよ?勝手に濡れないし。それに…」
「それに?」
ああ、これは完全に怒っているな、と思いながら「それに…」と繰り返した。
「我慢するのは人が増えてもいい状況になるまでって言っただろ?」
ニヤリと笑むと竜崎の顔が歪んだ。
「だからと言って私は了承の意を示したりしていません」
「あれ?そうだっけ?」
月が無邪気を装っていうと、白々しい、と竜崎が吐き捨てる。
「もういいので早く―っ!!ぁっ、ちょ、ぁあっ」
抜け、と言われる前に先手を打って腰を緩やかに動かす。丹念に解した竜崎の中は、一度馴染んでしまうと、恐ろしいスピードで与えられた快感を貪った。セックスは体だけでするものじゃない。頭も使うと云うことを筋がいいとするならば、世界のLの右に出る者など月以外にいやしないだろう。
「あっ、やめっ…うぁっ、あっ、ぁあ!やめて、くださっ―」
言いながら竜崎は腰をゆらめかす。言葉とは裏腹に体は月を貪った。
「ふっ…うぅっ…んっ…ん―」
「すごく、気持ちいい、りゅうざき」
「…っは、ぁ…っ、…っっ、っあ、貴方はとんでもないバカです!」
快楽に喉を吐く喘ぎの狭間に竜崎が一瞬だけ理性を引っ掻き集めてギロリと睨みつけ一息に叫んだ。それからもうどうにでもなれ、というように月の体に腕を廻す。
言われた言葉は『バカ』だったが、じわっと心が温かくなって、月は竜崎の唇を奪うと些か乱暴に腰を振った。それでも、既に快感しか捉えないのか、竜崎の中がしとどに濡れる。何度か「いい」と漏らした。
前後不覚になるくらい、バカみたいに腰を振って月も喘ぐ。
「あ、ぁあ、いい、気持ちいい、りゅうざき、…うぁっ、あっ、あ」
断続的にあられもなく声を上げて、限界を越え弾けた体液を流し込む。竜崎はそれに目を瞑って耐えると、その上に倒れこんだ月の体を少しだけ抱きしめた。
それに、癒しを覚えて甘えるように顔を擦り付ける。体温の上昇で仄かに香りたった竜崎の体臭で肺を満たしていると、竜崎が月の頭をペシリと叩いた。
ああはい、早く出て行けってことね、と一抹の遣る瀬無さを感じながら体を離して引き抜き、身支度を整えようとすると冷たく「何してるんですか」と竜崎が言い放つ。月は「?」を浮かべて竜崎を見下ろした。
竜崎は恐ろしい顔をしてガリっと爪を噛むと「私まだイってません」と言い放ったので、月は破顔した。



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