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…DANGEAR… 性的表現を含みます。 苦手な方はお引き取り下さい。 ………………………… 「…ッ」 「メロ」 ニアのやけに静かな、だが抑えきれない熱を帯びた声が背後から聞こえた。 「…大丈夫ですか？」 苦痛に歪んだ顔。痛みを逃がす為に噛みしめた唇から感じる鉄の味。 『大丈夫なワケあるか！』 出来ればそう叫びたかったが、臀部から這い上がる、鈍いくせに時折鋭く響く痛みに、メロは細く息を吐くにとどめた。 (畜生！痛いんだよ！早く抜けよ！) ギリギリと歯を食いしばってみても、痛みは一向に消える兆しも、減る兆しも、見えない。自分の中に存在する圧倒的な違和感も消失する気配は無い。 (今更聞くくらいなら、何で最初から聞かねぇんだ、よ！！) まあ「させて下さい」と言われた所で「死ね」という答えぐらいしか返せないとは思うけど。 兎に角、何があっても、ニアに抱きつく事など二度とすまい。変態を増長させてしまう事は今回の件で火を見るより明らかだ。 メロは死ぬ程、気合いの足らない足元のサンダルを恨めしく思った。 【足元のサンダル】 「…そういうワケで、二人には頼むよ」 ロジャーにお使いを頼まれて、メロは眉間に皺を寄せた。 「ヤダ」 「………メロ…」 呆れた声にため息混じり。ならば、初めからメロの相棒にニアを選ばなければいいのだ。仲が悪い(一方的)のは知っているだろうに。 「別に行くのが嫌って言ってるワケじゃ無いじゃん。他のヤツなら、喜びはしないけど、行くし」 言いながら、隣のニアの視線を感じる。 この前の夜(詳しくは『特別』参照)から僕等の関係は微妙だ。 ニアが僕に『好き』だと言った。 『好き』なんだと言われた。 睨んでいたのでは無く、見つめていたのだと。 目を逸らしたのは、照れ臭かったから、だと。 …それを信じろと、ニアは言う。(特別、信じろなんて口に出されたわけでは無いけどそういう事だろう？) あれからゆるやかなニアのアプローチが始まったワケで、メロは以前から思っていた『嫌い』と『どうしていいのか分からない』の距離感を上手く掴めないでいる。 昔のように、嫌いでムカつくだけならば良かったのだろうが、今の自分はそれ以外の複雑な気持ちも抱えていて、それで強く突き放せないでいる。 「…しかし。それでは困るのですよ、メロ。相手がニアとメロを指名しているのですから…」 この院を設立させているのは、キルシュ・ワイミーとＬ、である。 Ｌを育てる機関だからと言って全く付き合いが無いワケでは無い。 (だが、それはＬを育てる機関として…という事を隠したままでだが) 多少、多少。偏屈な人間と関わりを持つ事だってあるのだ。 メロは、以前にも遣いに出された先の老人の姿を思い浮かべながら、仕方なしに頷いたのだった。 「あー…終わった…」 暇を持て余しているワケは無い筈なのに、一癖もニ癖もある老人はニアとメロを構ったまま離さずにいて、辟易し過ぎてメロは何度となく爆発しそうになった。 そこを度々ニアに助けられたりもしながら(別にニアに助けられるいわれなどはないが)なんとか無事におつかいを終えたメロは疲弊のため、はぁ、と息をついた。 「少し休んで帰りますか？」 老人の屋敷には目が移ろう程の美麗なお菓子が並んでいたが、メロはちっとも食べられないでいた。老人が奇怪な問題を出してばかりで離さなかったからだ。 目の前に飴だけを見せられた、そんな気分。 「ジェラード食って帰る」 公園にはジェラードを売っている露店があった筈だ。この時間ならばまだやっている。 「……」 ニアの呆れたような視線は見なくとも分かる。 どうせ『まだ食べるのか』とか思っているに違い無い。 しかしメロにはあの程度の量なんて『ちっとも』にしか当てはまらない。 「…お前は先に帰ってもいいんだ」 メロの食い意地は知っているのに、いちいち毎回呆れる風なのが気にくわない。 ムッとした声音を聞きとって、ニアが笑った。 「いいえ。一緒に行きます。せっかくのデートですし…」 「………………ぁ？」 くすっと小さな笑い声が耳に届く。 思考はぴたりとフリーズしたままだ。 「…………Σはあっ？！」 (何言ってんの、何言っちゃってんの！このバカ！！) あんぐりと、でっかい口を開いてみせるメロに、ニアは目尻に笑いを残したまま、行きましょう、と促す。 「…なっ…おま…」 ぴたりとその場に立ったまま動こうとしないメロの一歩先に立ったニアが首を捻った。 「ジェラード、食べないんですか？」 「食べる」 「…では、行きましょう」 「～～～～っ」 そっと手を取られる。 珍しく先を歩くニアの後ろ姿を、メロは複雑な思いで見つめていた。 結局、ニアと二人並んでジェラードを食べる事になったメロは、覚束ない様子でジェラードをペロペロと舐めているニアに毒気を抜かれてしまっていた。 「…メロ？」 その視線に気付いたのか、ニアが顔を上げて小さく頭を傾げて、メロの瞳を覗き込んだ。 「溶けますよ？」 「あ？…あっ！」 トロリと溶け始めたジェラードに、メロはニアから視線を外し思いっきり口を開けてひとまず食らいつく。それから、周りを舐め始めた。 そんなメロの様子を見て少しだけ距離を置いて隣に座ったままのニアが忍び笑う。楽しそうなニアのクスクスと言う声が耳につく、メロは咎めるように声を上げた。 「…なんだよ…」 横目でニアを睨み付けると、ニアは短く「いえ」と返事をした。 「楽しいな、と思いまして」 「…どこが」 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |