七転八倒堂

二人の親は、お互いが、
雨の日や雪の日以外は外で遊び、
それ以外の日は二人で家で過ごすようになったことに安堵を覚えていたようだった。
弟であるルートヴィッヒはギルベルトと一緒に過ごした保育園で親父が迎えに行くまで帰ってこれないから、家には誰もいなかったが、
家族がいれば何てことない廊下の端の暗闇の恐ろしさや、しんと冷えた静寂も、エリザベータと二人でいれば、ほんの少し和らいだ。
それはエリザベータも同様だったらしく、いくら利かん坊な二人だったとはいえ、ただの小学生だった二人は、お互いしか寄りそえるものがないとでもいうように、毎日の放課後を一緒に過ごした。
しかし、いくら二人でいれば少しはマシだと思えたとはいえ、
小学生までは保育園だったギルベルトとは違い、母親の記憶をもち、またそしてその後は従弟のローデリヒの家の近くの幼稚園に通いそのままローデリヒの母親の元で過ごしていたエリザベータにとって、
大人のいない二人きりの家は、ギルベルトが想像した以上に寂しかったのではないだろうか。
今になって、そんな事を考える。
エリザベータはいつも勝気に口角をあげて、事あるごとに、ギルベルトが小さな音にびくんと震えたのをからかったりしていたが、、あれは寂しさの裏返しではなかったのだろうか。
弱い自分を笑い飛ばすようにしていたのではないか…。
まあ、それも今になってはいい思い出だ。
そんな感じでギルベルトはよくエリザベータにからかわれていたけれど、
興味本位に怖い話をTVで見てしまった後は、二人で同じベッドの中に潜ってやり過ごしたし、時には大声で歌を歌ってみたりと、一緒になってバカな事を繰り返していた。
また普通に遊んでは物を壊して怒られたりしていた思い出は、今となっては優しい記憶でしかない。
ただ、二人とも外で遊ぶ方が好きだったことは日記を読めばよく分かった。
捲るページ、捲るページ、晴れの日は、陽が暮れるまで一緒に外を飛び回っていたと記されている。日記の記録が不明慮な記憶を補完して脳裏に再現された。

「どっちが、せいこうするか　しょうぶするか」
そんなことを言って蜻蛉の目を回してみたり、トカゲのしっぽが本当に切れるのか試してみたり、蓑虫の蓑を剥がしてみたりと、好奇心旺盛に手近にある不思議な事は何でもやった。
猫のしっぽを捕まえて引っ掻かれたり、逃走中の犬に追われて泣きながら逃げた事もあった。あの犬の犬種は一体何だったろうか。
日々のことを喜怒哀楽めいっぱい綴ってある日記には、流石にそこまでのことは書いていなかったけれど、
『アイツはおれのことを　なきむしだと　いうけど　ぜったい　アイツのほうが　いっぱいないた』
という、負けず嫌いな一文を見て、ギルベルトは笑って栞を挟んだ。
日記には自由で眩しい幼少期が書き連ねられていてとても楽しいが、
今、ギルベルトと一緒にいる大切な人が自分の事を呼んでいるので、続きはまた今度にしよう。
「ギルベルトー？」
「今、行く」
日記を閉じて席を立つ。声のする方に足を向け、こちらを向いて笑った人に笑みを返して、腕の中に閉じ込めれば、淹れたての紅茶の匂いがふんわりと香った。
自分が知らなかった形態の家族を手に入れて、ギルベルトは今も大変幸せである。

そして、ローデリヒと一緒にいるアイツも同じくこの幸せを噛みしめているのだろうと思えば、
二重に幸せな気持ちに陥った。

ＥＮＤ

◆　後書きという名の懺悔　◆

こんにちわ、水野です。
前回ＵＰした英ベラ+露英っぽいお話を受け入れて貰えて嬉しかったので、更に調子にのりました。普+洪がメインのお話でした(｀･ω･´)
私、普洪も好きなんですが、どっちかというと墺洪前提の、特別な関係の普+洪が大好きなのです。普洪になりきれない普洪が好きなのです…。
英でいえば、仏英も好きなんですが、普英前提の、でも特別な関係な仏+英が大好きなのと、一緒なんだと思います。どちらも切っても切り離せない。
普+洪にしても、仏+英にしても、幼馴染でお互いが特別なんだけど、近すぎたから一緒にいれない二人みたいなのが、素直に二人がくっつくのよりも好きみたいなのです。
そして、その上で、似た者同士で、実は全然似て無い二人（二人とも切り離せない相手がいる＝普は洪と独。そして英は仏と米、と、そして一人楽しすぎるという相似点。でもポジティブさんとネガティブさんという性格の相違点）が、出会って恋に落ちるのが好きなようなので、
気が付いたら、こんなのが出来上がっていたのですが、例の通り、今までお蔵入りになってました（笑）

本当は、シリーズ化したかったんですが、時間と時間と時間と時間の都合と、あとは、普英及び英受けサイトで普洪の話を沢山あげられても困るだろうな、という事で、
とりあえず、性的な感じのしない幼い時の話メインで一話にまとめました。

因みに本文に『この後起こる騒動』とありますが、
これは、洪が一時成長期を迎えた小学生高学年の時のお話を指しています。
『親友』だった二人の前に男女の性差が出て来て、周りの関係と共にギクシャクしてきて「俺達親友だろ？」という洪に「親友じゃねーよ」といった普が、…というまあ、こう過ちな感じのR-18的なお話になるお話でした。
中途半端に書いてますが普英サイトなので、とりあえず割愛（笑）
中途半端といえば、普英（♀）の出会い編も中途半端に書いているので、（でも続きを書く余裕も予定もないので）
おまけとして乗せておきますので、宜しければどうぞ。
「…あれ？これ、オマケと本編逆じゃね？」と言われそうですが、
長さ的に普+洪の方がメインぽかったので、普+洪がメインと言い張ります。(｀･ω･´)

最後まで見てくださって、本当に有難うございました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

おまけの普英（♀）大学生編

≪new[3] NOVEL back≫

[0]TOP。