|
[ Mein Tagebuch ]番外？ ※Attention Please※ このお話は、現代パラレルにおけるギルベルトさんの青春の日々を振り返ったお話で、大学生の普英（♀）です。 全てにおいて何か色々適当です。ご都合主義ででっち上げました。 ～『アーサーとの出会い編』～ 最近よく、 『意外』 だと言われる。 それは知り合いから恋人に渡るまで多岐に及ぶが、大概そう言われるのは付き合ってしばらく経った辺りだったりする。 そう、ちょうど顔見知りが知り合いに昇進した頃であったり、又は何かもろもろの交遊関係をすっ飛ばして恋人になったヤツの部屋に普通に泊まるようになった、みたいな頃に。 高校まではローデリヒやエリザベータとつるんでいたり、弟やその友達に囲まれていたせいか、俺の高校生活と言えば、健全そのもので、大学への進学を機にそれもいかがなものかなーと、とりあえずまー彼女を作ってみたのだが…、 女、という生き物との付き合い方を知らない（エリザベータは生物学上でしか女でないので除外する）上に、酒の席での延長線上。 流れるようにエロい事をして、なし崩しで付き合って、そんな付き合いを数回繰り返して、…ギルベルトは早々にお付き合いというものに飽きた。 確かに元気が有り余っているので、シたいなーとは思うのだが、だからと言って女とお付き合いをするのは面倒である。無駄に長いショッピングに付き合ったり、お喋りに付き合わされたり。お喋りもショッピングも嫌いではないが、如何せん趣味が違うというか、そうなると色々と苦痛であるからにして、ギルベルトは大学初めての夏休みは健康的にバイトに励むことにした。 「宅配便でーす。お荷物お届けに参りましたー」 なぜ運送業のアルバイトをする事にしたのか。 まず条件として、とても短期である、という事があった。 お中元の配達アシスタントであるから、期間は1カ月程度のものだ。これならば、夏休み全てを費やすこともないので学生の本分である学業を疎かにする事もないし、バイトが終われば家族との時間を大切にする事もできる。 この先嫌でも家族とは別々になってしまうのだから、今の内くらい、ちゃんと家族と顔を合わせたいとギルベルトは思うのだ。これはギルベルトの性格が真面目だからというよりは、もしかしたら、幼い時に母親がいない寂しさを覚えていたから成せる事であったのかもしれないが、その辺は割愛しておこう。 まあ、兎も角も、学生の本分はやはり勉強だ。高い学費を払って、高い倍率押しのけて入学したのだから、学費は社会人になってからおいおい返済するとして、出来るならば、今は学業に専念した方がいいだろうという腹があった。 その辺を総合した結果、基本的には在学中にバイトはしないという結論に達したワケなのだが、けれどまあ、本格的に社会に出る前に、アルバイトというもので肩慣らしをしはしておきたい、という欲求も無いでは無かったので、道を覚えるという意味でも将来好都合かと、夏休みの半分だけバイトに勤しむ事にした。 多分こういう所が、見た目や普段の言動に反して『意外』だと言われる一因であるのだろう、とギルベルトは荷物を抱え足早に移動しながら考えた。 （『意外』で何が悪い） 女とのお付き合いに飽きた理由の内には、前述の他にも性格の不一致が多分に含まれている。 外見も言動も無駄に派手なギルベルトだが、根はかなり几帳面で真面目な為、付き合ってみると「思ったよりも面白くない」などと評されてしまうのである。 『お前意外に真面目だね』 これは大学になって知り合った悪友であるフランシスの言である。 こんな風に男女問わず大学に入ってから『意外だ』と言われることが増えたのであるが、別にギルベルトは他人からの評価を殊更気にするタイプではないので、そう言われるだけであれば、特にどうとも思わない。だが、これが肉体関係を持ったお付き合いに発展すると途端に悩みの種になるのだから困ったものである。 ギルベルトとしては性格合わねーなら別れりゃいいじゃねーか、と思うものの、バカっぽいけれど、何気に文武両道で、ルックスも良いだけあって、何だかんだ文句を言いながらも、相手はすぐには別れに応じない。 多少もめごと染みた事にも発展して、結局ギルベルトはお付き合いというものに飽きたのだが、実際は飽きたというよりも疲れたという方が語彙的にはあっているのかもしれない。 『女ってホント面倒くせぇ』 それが、ギルベルトが大学に入ってから夏休みに入るまでに培った教訓であった。 が。 バイトを始めて最近は少しだけその考えを改めている。 切欠は部屋、だった。 配達という職業柄、当然、部屋の奥まで上がる事は無いが、玄関はバッチリと見る事が出来る。 玄関だけで何が分かるということなかれ。 家主の人となりを垣間見るのは玄関先だけで十分で、プラス午前中の配達だと更に面白い素顔が見れる事になる、という事をギルベルトは知った。 普段、どれだけ綺麗な姿を装っていても、部屋の中は案外…というのは結構多く、休日の午前、ともなると、更にそれは顕著だったりする。 寝起きで、部屋着で、ノーメイク。 別にそれが悪いとは思わないが、とりあえずギルベルトの性格とは合わないという事は、大学デビューからの短い期間で学んだ事だった。 人の部屋の中をともかく言うつもりは無いし、起床時間だって、好きにすればいいとは思う。 …でも、一緒にいるとやはり生活リズムのズレは、お互い結構気になるもので…。 ここでもギルベルトの綺麗好きな性格であったり、割かし早起きでトレーニングを欠かさない、などといった生活習慣を『意外』という一言で片付けて、遠まわしに苦情として追及された経験を踏まえれば、 結論。 コンパで知り合ったばかりの相手と直ぐに一夜を共にしてそのまま恋人路線とか、よくない…という結果に辿りついた。性格あわないとか致命的だ。 それに軽く付き合っていれば性病の心配だってあるし、これからは自分自身も自粛して、相手ももうちょっと身持ちを固いヤツと付き合ってみるかなー、などとギルベルトは思っている。 『意外』だって『もっとフランクな男だと思っていたのに意外に真面目で面倒臭い』という悪い意味に使用される事もあれば、『もっと軽い男だと思っていたのに、意外に真面目で見直した』という例だってあるワケで、 結局は付き合う相手を間違ったのだろう、とギルベルトはアルバイト中にそんな事に気付いた。 さて、今日はどんなヤツとめぐり合うことが出来るだろうか。 「はい」 そして冒頭。 呼び鈴を鳴らしてすぐに出て来たのは眉毛の特徴的なうら若い乙女だった。 部屋からは、薔薇と甘いミルクティーの香り。 髪の毛こそボサボサだったけれど、塵一つ無いような手入れされた玄関には散乱した靴などは一足もなく、ハイセンスとは言い難いが、趣味の良さそうな花瓶には生花である薔薇が活けられていて、ギルベルトは思わず「お」と思った。 「お荷物に間違いはありませんか？間違いがなければここにサインをお願いします」 伝票を渡しながら相手を不躾でないくらいの視線で観察した。 身持ちの固そうな、キッチリ首元まで止められたブラウスのボタン。肌の露出の無い黒いスラックス。大きなペリドットの瞳に、ふくよかな頬のライン。体格自体は痩せ形みたいだけれど、尻はともかく、胸はある。 「お疲れ様です」 しかも礼儀正しく、サラサラと書かれた筆跡もやや几帳面さが目立つが流暢で、微かに微笑んだ顔がまた、可愛いらしかった。 仕事でお金を貰っているとはいえ、やはりねぎらわれると、嬉しい。笑顔付きとか思わずつられて笑顔になってしまう。 伝票を受け取っていたら、ふと差し出された指先に目がいった。綺麗に切り揃えられた指の爪。 それを見て、ギルベルトの好感度はまた上がった。 朝からきちんとしてる子も、部屋の中を綺麗にしてる子もそこそこいるけれど、ネイルなんてしていない綺麗な桜色の清潔そうな短い爪をした女、というのは中々少ない。 勤務中なので口説く事も出来ないから、彼女が誰のものでも構わないのだろうが、ギルベルトは内心でちぇーと呟いた。 （なんだよ、アーサーってヤツのもんかよ） 伝票の宛先は『アーサー・カークランド』という男のモノだった。 同棲か、若く見えるが既婚者か。 左の薬指に指輪は見えないけれど、こんな朝っぱらから男の部屋にいるのだ。兄弟という線も捨てられないが、まあ十中八九彼氏だろう。 （ちぇちぇーっ） まあ、独り身だったとして重ねて言うが勤務中だ。何がどうなるワケも無いが、そんな事を考えて、 それから数時間後の事だった。アーサーに再会したのは。 業務を終えたギルベルトは家に帰るルートではなく、街に向けてぷらぷらと歩いていた。 弟のルートヴィッヒはフェリシアーノちゃんの所で、親父も仕事で遅くなるから飯はいらない、との事。 だったら、偶にはフランシスがバイトしているバーにでも飯を食いがてら冷やかしに行くか、と訪れた先に彼女はいた。 フランシスがバイトに入るだけあって、というかフェリシアーノちゃんの祖父の店なだけあって洒落た面持ちの店内は、煌びやかな悪友の外見をも取り込んで随分と落ち着いた雰囲気を醸し出している。 ギルベルトはまだクローズが掲げられている店の扉を軽く押して店内に入っていった。 知り合いには時間外でも上手い飯を提供してくれる穴場である。 ギルベルトはそんなフェリシアーノちゃんの若い爺さまがやっている店内に入り込んですぐ、カウンターに立ったフランシスに向けて「よっ！」と声を掛け、それから固まった。 フランシスとお喋り中のカウンターの前の席、声を掛けて顔を上げたフランシスと共に振り向いたのは、今朝会ったばかりの彼女だった。 「あ。」 「…え？…あ」 彼女の顔を見て思わず声を上げたギルベルトに、彼女は少し戸惑った様子を見せた後、思い出したのか確認するようにギルベルトを凝視した。 「え？何？二人とも知り合い？」 「…いや、」 「今日、宅配で」 「ああ、ギルちゃんのアルバイト運送業だったっけ？」 「…おう」 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |