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古い古い、上等なハードカバーに覆われた初めての日記帳。 子供に与えるものにしては上等過ぎるソレは、 飽き症の子供にも大事にされてその日々を丁寧に書き連ねられていた。 そんな、 現在はブログに変わってしまったが今日まで脈々と続くこの日記は、 俺様の俺様による俺様の為の素晴らしい俺様を記録する為のもので、 いつか、とんでもなく大物になった俺様の自伝の書を作成する時の為に作成されていたものだったのだが、 今は、大衆に見せびらかすだけのものではなく、 なんでもない過去をひっそりと振り返る為に残されていた。 [ Mein Tagebuch ] ※Attention Please※ このお話は、現代パラレルにおけるギルベルトさんの青春の日々を振り返ったお話で、今回は普+洪の小学生低学年がメインのお話です。 最後に名前は出て無いですが、ちょっとだけ普英（♀）…。最早ごめんとしかいいようのない女体化クオリティ。（ですが、ハッキリとした女体の表現はこの話ではしていません） 『Mein Tagebuch』→直訳『私の日記』（エキサイト翻訳様）→意訳『俺様日記』のつもりです。 パラレルなので、書き手の都合のいいように編成された世界になってます。ごめんなさい。 因みに後書きに大学生の普英（♀）のおまけを置いてますがここからでも飛べます。 似たもの同士の俺達は いつも二人で 沈む夕日を眺めていた。 ～『幼馴染との出会い編』～ 俺様史の中で一番古いその日記には、 尊敬する親父の名前と、可愛い俺の弟の名前と、 それから、アイツの名前でいっぱいだった。 トリ月 ピヨ日 ギルベルト６歳 桜咲く、春、入学式。 「ギルベルト」 名前を呼ばれてギルベルトは、手を繋いだまま我が父を見上げた。 保育園にいた頃とは違って溢れかえらんばかりの人の多さに気圧されて、校門の所で足を止めてしまったギルベルトに親父は優しく微笑みかけて来た。それに勇気づけられるようにしてギルベルトは一歩を踏みだす。 小学校という敷地の中には沢山の大きい人間と小さい人間がいっぱいいて、その人々はやがて分散すると保育園にいた時と同じくらいの部屋に入って行ったが、しばらくしてまた大きな広場へと移動した。 そのでっかい建物である体育館をぽかんと眺めていたら、列が詰まって、早く行けよ、と唇を尖らせられてしまったので、ギルベルトは慌てて足を踏み出した。 その広場で行われた親父よりも年のいった大人の話は、とてもつまらなくてギルベルトは足をぶらぶらとさせる事で暇を潰した。保育園にいた時から先生に『落ちつきがない』と言われていたというのは、後に聞かされた話である。 「おい、やめろよ」 「なにがだよ」 大変つまらなくて不機嫌だったのに、ムっとした顔でそう詰られてギルベルトもまたむすっと唇を尖らせた。前に座っていたのは、栗色の髪を肩の辺りまで伸ばして首筋で括ったヤツだった。可愛らしく「やめて」と言われたワケでもなく、よく陽に焼けた快活そうな子供だっただけに、ギルベルトはエリザベータを男だと勘違いした。 エリザベータは眉間に皺を寄せて「あし」とギルベルトの足に視線をやった。つられて自分のぶらぶらしている足を眺めたギルベルトに、「おれの いすに ぶつかってる」と言った。 「…ああ。あー、わるい」 「きをつけろよな」 何で相手が不機嫌なのかを理解して謝れば、エリザベータはそう言って顔を前に戻したので、ギルベルトは退屈しのぎにつんつんとエリザベータの肩をつついて話しかけた。 「なあ、おまえ、なまえ、なんてーの」 「…なんだよ、おまえ。ひとになまえ、きくまえに、じぶんから、なのれって、おそわらなかったのか」 この時のエリザベータは仲の良かった（と本人は思っている）従弟のローデリヒと離れ離れになってしまってご機嫌斜めだったらしく、そんな事情を知らないギルベルトとしては、『何だコイツ、ツンツンしやがって』とエリザベータの株を急降下させた。 それでも、親父にも保育園の先生にも同じことを教えられていた事を思いだし、「ギルベルト」と一言で答えると、エリザベータも「エリザベータ」と一言で答えてまた前を向いた。 ギルベルトは『何だその名前女みてぇ』と思ったけれど、それ以上話を続ける気分では無かったのでまた足をぷらぷらさせてその日の晩御飯のことを考えて退屈な時間をやり過ごした。 この時、心の中で留めた言葉を声にしていれば、エリザベータとの関係は変わっていたかというと、その答えはNineである。何故なら彼女自身が自分の事を『男』だと思っていたので、それからの事はなるべくしてなった、というしか他が無い。 …ああ、一応補足しておくとすれば、別にギルベルトは今まで歩いて来た人生に後悔などはしていない。 それは今だから言える事だからかもしれないが、 色々間違えた過去も含めて今の自分だと思っているし、 間違いというだけで今の自分を切り捨てる気にはならなかった。 ギルベルトは少しばかり黄ばんだ用紙を捲ってヘタクソな字で書かれた『にゅうがくしき ムカツクヤツがいた』という内容のページを一つ捲った。 -------------------------------------------- それから、しばらくはエリザベータには近づかなかった。 ギルベルトは持ち前の明るさですぐに他のクラスの友達とも仲良くなったし、 それはエリザベータも同じだった。 しばらく接点の無い生活をしていて、 それでもエリザベータと友達になったのは、 エリザベータにもギルベルトにも母親がいなかったからと言える。 ギルベルトの母親はルートヴィッヒを産んだ時に、エリザベータの母親は、数年前に亡くなっていて、ギルベルトは小学校に上がるまでは保育園に預けられたし、エリザベータは父親が帰ってくるまでローデリヒの所に預けられていたが、二人とも小学校に上がる事になってからは父親が帰って来るまで一人きりになってしまったのだった。 まだこの時代、母親は家にいるものであり、いわゆる鍵っ子は少なかったから、当然のようにギルベルトもエリザベータも学校が終わったあとに暇を持て余した。 さりとて、入学したての一年生にとって、学校という未知の世界は利かん坊の二人にとっても少しばかり気遅れする場所で、そこに居場所は無く、仕方なしに近所の公園に繰り出したギルベルトはそこでよくエリザベータに会うことになった。 「……………」 「……………」 お互い第一印象は最悪といわなくともそれなりに悪かったので、最初は無視をしていたのだが、３回、４回と顔を合わせ、更に子供が帰宅するような時間になっても顔を合わせてしまえば、もう仕方ない。 「よぉ」 となんとはなしに声を掛けて 「おぉ」 と返事が返ってくれば、 それ以来なんとなく一緒にいるようになった。 一緒にいるようになれば不思議なもので、ギルベルトはすぐにエリザベータと打ち解けた。 エリザベータはサバサバとした性格をしていて、ギルベルトと波長がよくあったし、 体を動かす事が大好きな二人にとって、お互いは格好の遊び相手であったといえた。 きっとエリザベータとは、学校が男女の別をうやむやにした、『男女とも仲良く！』という標榜を立てておらず、女だと知っていたとしても、きっと仲良くなっただろう、とギルベルトは思っている。 ただ、もしも勘違いが最初からなかったとすれば、その後に起こる騒動は回避されて、もしかしたら二人の関係は今と違った形―…になっていたかもしれないが、 それはそれで唯一無二の親友であった大切な日々を失う事になるのだろうから、それは困るとギルベルトは緩く口角を上げた。今となれば何もかもが懐かしい。 ギルベルトはまた一つページを捲る。 -------------------------------------------- 二人の家は今まで互いが知らない方がおかしなくらい近所で、 続く≫ ≪new[3] NOVEL back≫ [0]TOP。 |